【本】17097『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』 白井 恭弘

投稿者: | 2017-07-27

第二言語習得に関して、様々な研究結果をまとめた本。
英語の勉強に役立つかどうかは別として、「そんなもんか」と思える本。
大人の第二言語習得は、子どもとは大きく異なるのは、誰しも納得するだろう。

子どもよりも大きく困難な、大人の第二言語習得のために、大事なのはインプット。
アウトプットが重要かどうかは研究によって結果が異なるが、インプットの重要性は誰もが認める。

そして、細かな間違いは結局最後まで残るので、細かく訂正することは無意味だ。
だから三単現のsなどを目の敵にして減点しまくるのは、言語習得においてはあまり有用とは言えない。
このような細かな事柄を使いこなせるのは、だいぶ後のことだと研究者は指摘する。

なかなか興味深い本だった。
まあ、ある程度まで学習が進んだら、あとは必要に迫られたら誰でもできるようになる、というのが実際のところだろう。

母語と外国語との距離は、やはり学習難易度に非常に強い影響をあたえる

第二言語習得(SLA)における母語の影響は「言語転移」と呼ばれています。つまり、学習者の母語の知識が第二言語に転移するのです。これは、第二言語習得のあらゆる場面で観察することができます。発音、単語、文法、文化など、様々な形で母語の影響が現れます。

どういう学習者が外国語学習に成功するかを予測する最も重要な要因は、三つあると言われています。   1 学習開始年齢 2 外国語学習適性 3 動機づけ

日本人の赤ちゃんは、生後数カ月はlとrの区別ができますが、その能力は生後六カ月から一歳くらいまでの間に急速に低下してしまいます。

十分に母語を聞いて育つ環境にあれば、幼児外国語教育などで外国語を聞かせるぐらいで、母語に悪影響が出るという心配はほとんど必要ない

もっと本格的に第二言語を習得させるために、インターナショナルスクールなどに子どもを送る場合です。うまくいけば、二つの言語を使いこなせるようになりますが、学校にうまく適応できなかったり、外国語で教科を学ぶので、ついていけずに落ちこぼれてしまったりすると、母語でも第二言語でも複雑な言語使用(たとえば、学校の教科学習に必要な言語)ができなくなってしまう危険性があるので、細心の注意が必要です。

大人の学習者がネイティブのように話せるようになるには、ルールを覚えてそれを適用するよりも、膨大な数のフレーズを覚えて使いこなすことがより重要なようなのです。

自閉症研究や「心の理論」で有名なケンブリッジ大学の心理学者サイモン・バロン=コーヘンらは、遊んでいる最中に、男の赤ちゃんのほうが物を、女の赤ちゃんのほうがお母さんの顔をよく見る傾向があることを実験で示しました。

三人称単数現在(三単現)の-sは、かなり早く導入されます。ところが三単現の-sが実際に使えるようになるのはかなり後のことだ、ということは数多くの研究によってわかっています。どんなにルールをはっきりと知っていても、即座に実際に使えるようにはならないし、英語がペラペラの上級者でも、話す時にはけっこう落としている

第二言語習得研究の結果わかってきた重要なことは、外国語のメッセージを理解する、すなわちインプットが、言語習得をすすめる上での必要条件だということです。アウトプットが必要かどうか、という議論はありますが、インプットを理解することの重要性を否定する研究者はいません。

リスニングは、聞いても二〇パーセントしかわからないような教材を聞くより、八〇パーセント以上わかる教材を何度も聞いたほうが効果があります。

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