【本】17096『生涯投資家』 村上世彰

投稿者: | 2017-07-26

高校の先輩ということもあり、購入してみた。
意外と面白く、おすすめだ。

批判はあるだろうが、ここまで資本主義寄りの意見を堂々と言う人は日本では貴重だ。
コーポレート・ガバナンスの意義を解き、日本の株式会社が株主の利益にならないことをすることを批判するその姿勢は、間違ってはいないだろう。
特に近年の粉飾決算の不祥事などを見ると、村上ファンドの騒動は、時代が追いついていなかっただけのこととも言える。

もちろん、株主、特にファンドの台頭によって、短期的な株価上昇のために目先の利益のみを追い求めるようになるという批判もある。
しかし、将来の日本経済の停滞を見越しているからか、日本の企業が内部留保を貯め込むことで、それが本当に日本経済にブレーキをかけているのはいただけない。
そもそも、村上氏が言うように、そのような企業は無理して株式上場しなければよいのだ。
たとえば吉本興業は非上場化した。資金調達の機会は減るが、コーポレート・ガバナンスなどうるさく言われることもない。

若い頃から一貫している村上氏の考え方は、非常に理解しやすい。

本書は、医療におけるコーポレート・ガバナンスについて考えるきっかけにもなった。
病院を株式会社とすると、株主にあたるのは保険者、さらに遡ると保険料を納めた国民のはずである。
しかし、病院は必ずしも国民にとって利益となることをしているとは限らない。
なかには、標準医療から離れたことをしながら保険診療をしているところもある。

悪徳医師はまだいい。悪気があるなら追求しやすい。
さらに問題なのは、善意の医師でだ。時代遅れの医療をしたり、患者のためと言いながら過剰医療を行う者は意外と多い。
それが患者のためになるならまだいいが、ひどい場合は患者の寿命を縮めたり、医療事故を誘発することもある。
このような善意の医師は、上記のような「上場しているにもかかわらず株主の利益を顧みない企業」と等しい。
善意の医師の肩を叩き、引導を渡す仕組みは必要だろう。

問題は、それを示唆するような指標・データが不明であることだ。患者の寿命や使用薬剤量だけでは計り知れない。
ともかく、企業における財務諸表のような、「これを読めばある程度診療の質がわかる」という客観的なデータが公開されていることは、医療の質を保つうえでは重要だろう。

とはいえ、日本の医療は医師不足のため、「質が低くても医師がいればいい」という本音もあるだろう。
「質が高くてアクセスしづらい医療」なのか、「質が低くても気軽にアクセスできる医療」なのか、どちらがいいのかは分からない。
ただし、お金がかかるのは、圧倒的に後者であることは間違いない。

父はいつも「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな」と言っていた。まさにその通りだった。

「投資するためには、まず相手を喜ばせなきゃ仕方ないだろう」

私の投資は徹底したバリュー投資であり、保有している資産に比して時価総額が低い企業に投資する、という極めてシンプルなものだ。

私は制度を作る側にいるより、プレーヤーとして日本を変えたいと思った。制度を作っても、実践するプレーヤーが日本にはいなかったからだ。

私は投資家であって、経営者ではない。投資家と経営者では、必要な能力や資質が全く違うと思っている。投資家は、リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。経営者は、投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す。

「期待値」のほか、私が投資判断を行なうにあたって重要視している指標がIRR(内部収益率、Internal Rate of Return)だ。手堅く見積もっても、IRRの数字が一五%以上であることが基準となる。

もう一人、私が期待している経営者にLIXILの瀬戸欣哉社長がいる。

会社の経営にコミットするため、報酬はすべてLIXIL株の取得に使うようだ。

私はファンドで投資する銘柄を選ぶ際、時価総額に占める現預金(不動産、有価証券など換金可能な資産を含む)の割合、PBR、株主構成などを点数化してスクリーニングをする

投資家の立場からすると、「資金調達をしたから、何かに使うように考える」のではなく、先に使途があって資金調達を行なうべきだし、資金があるのなら、どのように事業の成長や株主価値の向上に使っていくのかという具体的な計画が聞きたい。

私は何度も繰り返し、「どのような資金計画になっていて、投資するとすればIRR(内部収益率)でどのくらいを見込んでいるのか」といった、資本政策に関する質問を投げかけた。

生命保険協会が二〇一三年に行なった「株式価値向上に向け企業が重視することが望ましい経営指標」というアンケート(複数回答可)の結果を見ると、投資家の九〇%以上がROEと回答し、圧倒的な首位だった。これに対して企業サイドの回答は、「売上高利益率」が首位。ROEは五〇%を若干上回って、三位となっていた。

平均的にみて、買収資金の四分の一がエクイティ、四分の三は借入となっている。借入の中には劣後債を入れるケースも多く、リスクに応じて金利も変わる。リターンを求めて企業を買収するプロたちが、どのように資金調達をするのか見れば、どのようなバランスシートの状態が最も資本効率を上げるのかがおのずとわかる。

今後の不動産投資は、ベトナムやインドネシア、フィリピンなど、人口の多い国がいい

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