【本】17091『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』英『エコノミスト』編集部

投稿者: | 2017-07-07

未来の技術に関する本。
この手の本はすべて読むようにしている。
医療でも医師の雇用がAIで奪われるという話題が多い。

医師のなかにも何種類かいると私は思っている。
そのなかで、「医師免許という資格に守られてきただけの医師」は即座にAIで仕事がなくなるだろう。
しかし、患者へのサービスという面で、医師の役割は、診断を正しく下す、正しい治療法が導き出せるという部分は非常に小さいものでしかない。

そのことに気づけば、AIは医療の可能性を拡げる方向にしか作用しないことが分かるだろう。
筆者が述べるように、たしかに医療分野の雇用は増大するかもしれない。

たとえば新たなアプリや進化を続けるAIツールが、かつては医師が行っていた作業を担うようになる。特定の分子や細胞を狙い撃ちする標的療法が、医薬品開発の主流になる。そして再生医療やデータ・アグリゲーションを軸に、まったく新しいサブカテゴリーが台頭する。ただ、その結果変化した医療はある重要な点において、われわれになじみのある世界に近くなる、とジャンリコ・ファルージャは指摘する。つまり、患者が顧客として扱われるようになるなど、医療がふつうの産業に近づいていくのだ。

未来を予測するためのツールは三つあるが、歴史を振り返るのはそのうちの一つだ。少なくとも、過去を学ぶことによって質の高い予測が可能になる。

た。「犯罪者ほど科学の最新の成果を積極的かつ迅速に取り入れる集団はない、というのは周知の事実である」

新たなトレンドを理解しようとするジャーナリストや、企業のお抱え人類学者はこの方法を採る。それは「エッジケース(限界的事例)」、すなわち広く普及する前に、特定の集団や国だけで広がりつつある事例を探すことにほかならない。

日本が他国に先駆けて未来に到達したのは、通信業界が孤立した独占的性質をもち、また国内市場に十分な規模があったためである。これによって、日本のハイテク企業は他国のシステムとの互換性など気にせずに、創意工夫することができたのだ。

最終的に普及するテクノロジーは例外なく、一部の集団だけに使用がとどまっている潜伏期を経ることは否定できない。

来るべきもののヒントを得るために目を向けるべき三つめの場所は、本やテレビ番組、映画などのサイエンス・フィクション(SF)に描かれた、想像上の未来だ。

未来を想像するための三つのツール(テクノロジーの過去、現在、未来に目を向ける)

現在のトレンドは、パソコンではなくスマートフォンが中核的デバイスとなる方向を明確に示している。

予測モデルによれば、自動運転タクシーの登場で典型的都市の車両数は九〇%減少するとされる。ほとんどの人は自家用車を持つ必要がなくなり、駐車場に使われている場所(アメリカの一部の都市では総面積の二〇%に達する)が住宅や公園に転用できる。

これまで結びつきのなかった領域の交流が進む可能性も大きい。たとえば遺伝学は生物学と医学を情報科学に変えた。神経科学と脳の構造に関する研究と、コンピュータ科学と人工的神経ネットワーク構築の研究とのあいだでも、双方向のやりとりが増えている。

コンピューティング能力の大部分はデータセンターという見えない場所に置かれ、ユーザーが必要なときに必要な量だけ使うようになる。つまりコンピューティングはいずれ今日の電気や水道のように、必要に応じて使う公益サービスになるのだ。

将来を楽観すべき三つめの、そして最も重要な理由にある──まったく新しい大きな可能性を持ったテクノロジーが出てきたとき、われわれがその活用方法を見いだすまでには時間がかかる、

新たなテクノロジーが登場してから、その潜在力が完全に発揮されるまでにタイムラグが生じるのは、イノベーションの最適な活用方法を見いだし、それに合わせて世界のあり方を変えるのに時間を要するからである。

二〇一二年、バイオテクノロジーがアメリカにもたらした収入は、国内総生産(GDP)の二%を超えた(図6・1参照)。収入源は生物製剤(バイオ医薬品)、遺伝子組換穀物、工業バイオテクノロジー(燃料、酵素、材料など)という三つのサブセクターに分割できる。三つを合わせれば、二〇一二年におけるアメリカ経済への貢献度は鉱業(〇・九%)や公益事業(一・五%)、またコンピュータと電子製品の製造(一・六%)を上回る。

「余剰」な生産能力を持った牛が、体内で牛乳ではなく燃料や化学物質を作ったらどうか。

・複雑な有機飼料を食べ、特定の燃料や化学物質を生み出す人工微生物が自律的ロボットに組み込まれ、製造業のあり方は根本的に変わる。

ただ二〇五〇年に向けた最も大きな目標は、穀物の光合成を大幅に加速して、成長を早めることだ。すでにその初期段階として、原始的で非効率的なC3型光合成をしている種に、C4型光合成の能力を付加する研究が進んでいる。

魚類は摂取した栄養を肉(身)に転換する効率が非常に高い(哺乳類と比べるとはるかに高効率だ。これは、哺乳類は温血動物であるのに対し、魚は冷血動物であるためだ)。このため二〇五〇年には、魚が動物性タンパク質の主要な供給源となっていることも考えられる。

データを収集し、適切な情報を医療・健康記録に追加するようなデータ・アグリゲーターやハイテク企業は、市場の成長を実感するはずだ。健常者、患者、そして医療提供者のために大規模な単語ベース、もしくは数字ベースのデータセットをとりまとめ、そこから明らかになった情報を他の情報とつなぎあわせて、意思決定を支援する。

消費者が集めた情報を胡散臭いデータと意味のあるデータに選別することが必要だ。

・医療分野におけるテクノロジーのライフサイクルは猛烈に加速している。だが、変化の主導権を握るのはテクノロジーではなく、患者だ。その結果、医療は徐々に他の産業に近づき、患者は顧客として扱われるようになる。

企業の「秘伝の技」とは通常、独自のテクノロジーそのものではない。それを生かして入念に構築された製造プロセスと、それを動かす優秀な人材である。

VRの分野で先駆的試みをしているノニー・デ・ラ・ペーニャは、触覚的フィードバックへの解となるのは非可聴音だという。

社会がこうした未来の恩恵を享受するには、それなりのトレードオフを受け入れなければならない。一つめの懸念は、絶え間ない、ほぼ完全な監視状態に置かれることだ。

一九世紀が蒸気、二〇世紀が石油で動いていたとすれば、二一世紀の動力源はデータである。

医療分野と同じように教育分野におけるデータもストックからフローへ、つまり時々バラバラな塊として収集されるものから、絶え間なく一貫したペースで収集されるものとなる。

しかし長い目で見れば、医療、教育、法務などのサービスの市場が拡大し、雇用が増加すると考えるほうが理にかなっている。

私がこれまで読んだなかで最も衝撃的な研究では、女性が家計を握ると、子供の生存率が二〇%向上することが示されていた。

・本当に起こりうる問題は、テクノロジーの暴走ではなく、それを扱う人間の暴走である。

・テクノロジーとは、すべて応急処置にすぎないことを理解する必要がある。テクノロジーはニーズを満たすと同時に、新たなニーズを生み出すのだ。 ・社会として行動することなく、テクノロジーだけに問題の解決を委ねることはできない。

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