【本】17052『米中もし戦わば 戦争の地政学』ピーター・ナヴァロ

投稿者: | 2017-04-02

米中ネタは現在の鉄板と言っていい。
江沢民以来の「核心」と位置づけられた習近平と、移民排斥を打ち出し、グローバリズムを否定するトランプ。
中国、アメリカの国益が衝突することは明らかであり、この独裁的な指導者同士が衝突するのは避けられない、というのが主な見方だろう。

しかし、両者ともに現実的な指導者であるようにも見える。
習近平は、日本に対して「両国は住所変更できない間柄です」と述べている。イデオロギーなどを超えて、近所である以上はある程度の付き合いが必要だ、と述べている。
更迭された韓国の朴大統領とは対照的と言っていい。

対するトランプも、選挙前と比べると随分現実路線にシフトしている。

この両者が、全面衝突する可能性は低いだろう。
現在の国家間の戦争は、お互いが破滅するまで終わらないことは目に見えている。
本書では兵器の優劣について述べている。核ミサイルを一つでも迎撃し損ねると国土は壊滅的な被害を受ける。
たとえ確率は低くとも、失敗すれば都市機能がいくつも失われる。
こんなことは、どちらも望まないはずだ。

特にアメリカは、兵器のクオリティだけで戦争が終わらないことを身にしみているはずだ。
ベトナム戦争、イラク戦争と来て、中国と戦争などすれば泥沼化することは目に見えている。
「世界の警察をやめたアメリカ」が、最も厄介な国と事を構えるはずがない。

軍事費を増やす米中だが、これは自国の技術力を高める目的もあるだろう。
ロシアの戦闘機を即刻改良して低価格で売り出すのは、中国の確かな技術力を証明している。
国営企業の多い中国である。軍事技術の産業への転用もお手の物だ。

もちろん、両者ともに外交上の衝突は起こすだろう。
傍目からは過激なほどの発言や、他国への挑発も繰り返されるだろう。
しかし、米中間での落とし所は、両者の間で話し合いが行われ、全面衝突は避けられるだろう。

一八三九年にイギリスとの第一次アヘン戦争によって始まり、一九四五年の日中戦争終結まで続いたこの「屈辱の一〇〇年間」に中国は、軍事支配、海上封鎖、領土の割譲、多額の戦争賠償金、主権の侵害、大量虐殺など、現在の中国が恐れているものをすべて経験した。

アメリカ海軍による通商路保護の恩恵をどこよりも受けたのが世界最大の輸出国・中国だという事実である。

マハンは、経済的繁栄は制海権によってのみ保証されると考えた。その制海権は二つの重要な要因に左右される。重要な要因とは、①重要な通商路にアクセスするに充分な数の商船や海軍艦艇を製造するための工業力、②商船・艦艇の両方の活動を支援できる前進基地システム、の二つである。

(中国の)目標は、アメリカ海軍を軍事的に打ち負かすことではない。中国の目標は、ホワイトハウスの戦略的・政治的計算法を変化させ、コストとリスクの負担感からアメリカの政策決定者がアジアへの介入を躊躇するように仕向けることである。

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