【本】16123『大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす』佐藤 優

投稿者: | 2016-12-06

佐藤優氏の書いた地政学に関する本である。

・アメリカについて
アメリカの民主主義は、基本的に『白人の民主主義』である。『アメリカ民主主義はつねに「それ以外の存在」、すなわち「外部」を必要とする』
これをトランプ政権誕生前に書いているのだから、流石である。

・ドイツについて
『帝国主義下のドイツ、ナチス・ドイツ、そしてEUには、明らかな共通点が一つあります。それは、いずれも東方への拡大をベクトルとしてもっている』
たとえば、ドイツが脱原発をすることで、チェコが原発増設になる。こうした東欧へ負担を強いるやり方が共通している。

・EUについて
そもそもEUは、キリスト教共同体である。詳しくは、コルプス・クリスティアヌムと言うらしい。
『コルプス・クリスティアヌムとは、ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統である「ヘブライズム」、ギリシャ古典哲学の伝統である「ヘレニズム」、ローマ帝国のラテン法の伝統である「ラティニズム」という三つの要素から構成された総合体』

したがって、EUがロシアにまで及ばないのも宗教的な背景もあるようだ。
『EUがロシアやウクライナに延びないのは、コルプス・クリスティアヌムがカトリック・プロテスタント文化圏のものであり、正教文化圏を含みにくいから』

ついでにいうと、ロシア圏について『ウクライナをめぐる対立を、ロシアと欧米諸国との「新冷戦構造」と捉えるのは間違っています。冷戦とは「共産主義と資本主義というイデオロギーをめぐる対立」のことですが、現在の対立は、ウクライナへの影響圏をめぐる地政学的対立として捉えるべき問題』である。筆者の主張は共通しているが、ロシアは緩衝地帯を欲するという原則だ。

・アラブ世界について
『アラブ世界だけは、人権から神権の転換が起こらなかった。だから、現在でも神権です。神権では、神が決めたことがすべてであり、人間が自己統治する余地はありません。』
だから、「アラブの春」のあとに原理主義の政権が誕生したのだ。

『植民地の支配では、少数派を優遇するのは常套手段』 余談だが、このパートで、インドのタタ・グループを思い出した。彼らも、英国統治下で優遇されたゾロアスター教徒の末裔である。

・中国について
『中国はつねに「陸」の問題に悩まされ続けた国』である。現在最も大きな問題は、新疆ウイグル自治区である。
『人民解放軍傘下のサイバー民兵の総数は、二〇一一年一〇月時点で八〇〇万人と推計されている』
これほどの数とは…。
著者は、サイバー空間においても、通常の地政学とのアナロジーとして、『セキュリティを確保するための「山の地政学」を考える重要性』を指摘している。

毎度、勉強になる。地政学について、勉強になる一冊だ。

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