【本】16124『医学の勝利が国家を滅ぼす』里見 清一

投稿者: | 2016-12-07

医療費増大の原因は、高齢化だけではない。
むしろ、医療技術の進歩の方が影響が大きいと言われている。

昨今の高価な薬剤の登場は、まさにそれを象徴すると言えるだろう。

そんな状況で、医師である筆者が私見を述べている。

現在の医療は、患者が求める限り無制限に医療が提供される。
このままだと日本の保険医療は間違いなく破綻する。

破綻を先延ばしするためには、どこかで医療に線引きが必要だ。
つまり、「誰を切るか」を決めなければいけない。
みんなが思い通りの医療を受けられる時代は、すでに終わっている。

よくある自業自得論はなかなか困難だ。がん検診を受けずにがん患者になった場合に高価な”ペナルティ”が課されるのはまだいいが、生活習慣などでは区別できない。つきつめると、遺伝的な差から逃れられず、差別につながる可能性がある。

お金で切る、のは一つの手だ。「あなたはこんなにお金がかかってしまう、しかしもう国には払ってあげる余裕がないので自分で払ってください」とするのだ。悲しいが、一つの方法ではあるだろう。

社会への貢献や、意識レベルを元にするのはあまり賛成できない。認知症になったから治療はもういいだろう、という議論をしてしまうと、脳死患者はどうなるかとか、引いては重症心身障害児なども保険から外される悲劇が引き起こされる。

筆者の提案は、年齢で切る、というものだ。年齢で切って、自由診療にするなどという生易しいものではない。
一定の年齢以上の患者への診療を禁止してしまえと筆者は主張する。
乱暴ではあるが、合理的でもある。ある年齢以上を自由診療でも認めてしまうと、家族内での争いが起きる。どの価格までなら治療するか、などという争いを家族内で発生させないためだ。

なかなか筆者の話は痛快だが、笑い話でもない。何かしないと、保健医療が破綻するのだけは間違いない。
さて、日本政府は誰から切り始めるのか。

Pocket