【本】17081『勇敢な日本経済論』高橋洋一, ぐっちーさん

投稿者: | 2017-06-06

高橋洋一さんの年金の話はあまり納得できなかったが、この本は「こんな考え方もあるのか」と理解できるものだった。

また、人間がどん底にいるときこそ「買い時」で、そのときに助けてくれた人のことは絶対忘れない(その逆も然り)というところは、人生の上でも参考になる。

為替に関してはマネタリーアプローチと、2国間の実質金利差のふたつだけしか考えなくてよい、ビックマック指数は意外と実用的、というところは実用的。

ただし、ビジネスマンの考え方は、厳しい面もある。今後、格差が広がることは間違いないと断言する。要らない仕事を守るために余計な補助金などをばら撒く方が歪みを余計に生じさせて経済発展を妨げるからだ。

医療の歪みはどんどんひどくなっているような気がするが、保険が破綻したときには産業として保たないのではないか。

人間、どん底のときに助けてくれた人のことは覚えてるものなの。絶対、忘れない。絶頂のときはたくさん人が寄ってくるから、まったく覚えてないけど。

すごいのは台湾人とか中国人で、トランプが当選するやいなや、向こうから電話がバンバンかかってきた。「ホワイトハウスを出る人材がいたら、すぐ教えてくれ。うちの会社で雇うから」って。こういう感覚が日本人には欠けている。中国人はさすがですよ。

日本人はそういう逆張りが下手なんですよね。僕なんか、そればっかりですよ。金融業界って会社の出入りが激しいから、クビになったやつの面倒は必ず見ておく。どんな人間も絶対にどこかで返り咲くんですよ。それが次のビジネスにつながる。こういう投資の感覚って大事だと思うけどなあ。

。アメリカ人と交渉すると、だいたいそうなんですよ。とりあえず球を投げてみる。相手の反応を見て、次の手を考える。政治家としては突拍子もないのかもしれないけど、ビジネスマンとしては常識的な行動です。

絶対に失業率の数字は口にしない。「何千人増やす」みたいな表現しかしないんだ。

頭が硬直した左派の人がどの業界に多いかというと、学校、役所、マスコミ、規制業種。つまり、ビジネスをやっていない人たちなの。だから、損得勘定で考えられないんだよ。思想信条の人たちだから、「べき論」で考えちゃう。

ビッグマック指数って、意外と実感に近いんで便利なんですよ。あの程度のザックリさで、適正かどうか判断すればいいんじゃないかな。外国のビッグマックを円換算してやたら高いなあと感じるときは、円安に進みすぎてるんだと考えればいい。それ以上には、厳密に答えようがない。

日本の輸出依存度は世界的に見ても低い。だから、自国通貨安のメリットって、他国ほどではないんだよね。それでも円安のほうがGDPは増えるんだ。輸出産業のほうが裾野は広いし、激しい国際競争にもさらされている。だから輸出企業のほうに恩典を与えたほうがいいというのが、国際的な常識なわけ。

カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授が証明してるんだよ。通貨安政策をとると、自国内に流通するマネーの量が増えるから、インフレ率が高くなっちゃうでしょう。過度なインフレは誰も望まない。インフレ目標さえ導入していれば、ある程度のところで止まるんだ。

長期では経済理論がふたつあってね。ひとつはマネタリーアプローチ。各国の通貨供給量を比較して、為替水準を考える。有名なソロスチャートみたいなやつ。そのソロスチャートだって、2~3年先で7割当たればいいって世界

為替に関してはマネタリーアプローチと、2国間の実質金利差のふたつだけだね。

金融緩和は何のためかというと、失業率を下げるためなの。

通貨の戦いでは、政府は絶対に負けない

国でも地方でも、政府の借金を減らすには、子会社の民営化がいちばん簡単なやり方なんだ。ところが、すっごい抵抗されるの。大阪市だって、橋下徹(前大阪市長)さんがあれだけ水道局や市営地下鉄を民営化しようとしたけど、いまだに実現しないでしょう。私も東京の営団地下鉄の民営化に関わったけど、大変だった。

民間企業に融資して稼ぐのが、銀行の本来の仕事なんだ。これまでデフレが長く続いたから、国債の売買で儲けられただけの話で。マイナス金利で国債投資の魅力がなくなり、本来の業務に戻ろうってことならば、むしろ日本経済にとって喜ぶべき

財政破綻するほど危機的な状況じゃないのに、消費増税を強要するのは、天下り先を守るためだ──。

山口 予想を外した人は責任をとらない。日本のマスコミはひどいですよ。ちゃんと調べて、考えて書くということをしない。

山口 自分で一次資料に当たらないんですよね。

マクロ経済政策で見るべき指標はふたつしかない。GDPと失業率。このふたつ

失業者を最小化することこそマクロ経済政策の目的だとすれば、十分に正しい政策をとっている

山口 だから国はミスマッチの部分には踏み込まないと。 橋 踏み込みようがないよ。非正規社員を問題視する人が多いけど、「正社員は息苦しいから、非正規社員のほうがいい」って人も実際に多いでしょ。「時間に縛られるのが嫌だからフリーランスがいい」とか。そんなの本人にしかわからないよ。そこまで複雑なことを国のレベルで面倒見るのは、実務的に不可能なんだ。だから評価基準に入れていないわけ。国が一律に決められる問題じゃないから。

橋 この本でも、私はずっと「金融緩和をやって失業率を下げろ」と繰り返しているでしょ。そうやって全体のパイを大きくするのが、国の責務だと思ってるんだよね。

山口 日銀の政策目標に雇用は入ってないんですか? FRBの政策目標は、物価を安定させること、雇用を最大限に増やすこと、このふたつですよね。 橋 イエレン議長は雇用の専門家だしね。アメリカでは雇用が中央銀行の仕事になってるんだけど、日銀はそうじゃないんだ。制度上は雇用に責任を負ってない。

マクロ経済政策には、たったふたつの政策しかないの。財政政策と金融政策。最適通貨圏の話でロバート・マンデルが出てきたけど、彼はジョン・マーカス・フレミングと一緒に「マンデル=フレミング効果」という理論を打ち立てた。固定相場制では財政政策は効くけど、金融政策は効かない。変動相場制では金融政策は効くけど、財政政策はあまり効かない。そういう理論。

橋 まったく同感。あえて成長戦略というなら規制緩和と民営化だ

山口 だから、規制を受ける側から求めていく。「安倍政権の規制緩和には具体性がない」とか批判するんじゃなくて、自分が具体的提案をする。

橋 民営化って、かなり打率の高い政策なんだよ。ほとんど失敗してない。

施設って建設費は3分の1で、残りはすべて維持管理費。建てる以上にお金がかかる。だから、地方の豪華なハコモノを、僕は「墓標」って呼んでる。

予算をもらうときに「飲み食いに使います」なんて言ったら通らないから、「無形資産を作ります」って言えばいい。一瞬、何だかわかんないでしょう。そこがポイントなの。研究開発が無形資産の典型なんだけど、知識に投資する。そういう建前にすれば、飲み食いに予算がおりる。

アバウトに言うと、経済活動の4割ぐらいは中央、6割ぐらいは地方でやってるの。

ね。ところが、税金に関しては、国税が6割、地方税が4割と、真逆になってる。

だから志ある政治家を探して、実行してもらうことにした。コストパフォーマンスはそれがいちばんいいんだよ。政治家を育てるじゃないけど、何か相談されたら「こういう仕組みにすれば解決しますよ」って丁寧に教えてあげるの。

山口 裁量権があったほうが自分の権力になるわけですね。 橋 だから役人は補助金でやりたがる。補助金なんて、完全に裁量じゃない。俺の決裁でお金が流れている、というほうを好むんだ。

山口 共産主義国家じゃないんだから、どこまで国に頼るつもりなのか。商売を成立させるだけの人がいないんだったら、さっさと店を閉じて、別の場所に移るのが資本主義でしょう。

日本では税金を国税庁が、社会保険料を日本年金機構が徴収している。だけど、先進国では歳入庁で一括して徴収するのが普通なんだ。そのほうが効率は上がるし、行政のスリム化にもなるでしょう。

山口 これは格差が開くなあ。こればっかりはしょうがないですねえ。無理に規制を強化して「要らない職業」を守ろうとしたら、しわ寄せが必ずどこかに行くんだから。資本主義社会では、求められない職業は潰すしかない。

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