【本】17078『フィリピン―急成長する若き「大国」』井出 穣治

投稿者: | 2017-05-28

フィリピンは、アメリカの影響で民主主義が根付いたのが早かったにもかかわらず、ASEANのなかでは経済成長が遅く、人口あたりGDP金額では、マレーシア、インドネシアの後塵を拝している。本著は、フィリピンに焦点をあて、その魅力とリスクについて説明している。

結論から言うと、私はフィリピンには投資する価値が高いと考えている。今後数十年にわたって、経済成長が続くことが予想される。なにより、人口ボーナスの影響は大きい。さらに、国内でサービス業中心の産業構造ができているため、発達が期待できる。
IoTやAIとの組み合わせでサービスの発達はあるだろうが、人というインターフェイスが有効であることは今後も続くだろう。人口に支えられた国内の需要が衰えるわけではないし、成長は続くと考える。

–内容まとめ–
フィリピンの特徴は、人口ボーナスが長期にわたって続くことだ。現状では、2055年まで人口ボーナスが続き、これはアジアのなかでは最も遅くまで続くと予想されている。推計では、他のアジアでは、フィリピンの次はインドが2040年、インドネシアが2030年、マレーシアが2020年まで続く。

さらに、フィリピンはサービス業が発達していることが特徴である。特に、産業が成長するなかで、製造業が発展するステップを踏まずに、サービス業が主導する形で高度成長を実現したのはASEANのなかでもユニークな存在である。

サービス業のなかでも、海外で稼ぐ人の存在は大きい。彼らを管轄する、海外雇用庁という役所まである。国外からの送金額では、
①インド 689億ドル(3.3%)
②中国 639億ドル(0.6%)
③フィリピン 285億ドル(9.8%)
の順に多い(カッコ内はGDPに占める割合)。つまり、フィリピンのGDPの約10%が国外からの送金である。
送金元は、アメリカからが30%超とトップ、中東諸国からが25%、アジアからが20%弱、欧州からが15%くらいと地域は幅広く、地政学リスクの分散も出来ている。

成長を阻むものは、アジアの他国と同様だが、やはり政治リスクだろう。キリスト教国だがミンダナオ島にはイスラム勢力がいる。2017年5月現在、この武装勢力による侵攻で戒厳令まで出されている。アキノ政権時代に、ミンダナオ島のイスラム勢力との間で一度は和平合意に至っているが、今回はどのような結末を迎えるか分からない。

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