【本】17054『日本エリートはズレている』道上 尚史

投稿者: | 2017-04-05

外交官である筆者が、日本人の国際感覚がいかに乏しいかを指摘している。
日本の特徴は、リスクをとって海外に進出する割合が圧倒的に少ないというのはその通りだろう。

中国人のたくましさもそうだし、海外では韓国人の努力も目立つ。
国内では高齢化が進行したうえにデフォルト寸前まで行ったことから、可能性を求めた人材が海外へ流出したことが原因だ。

最近テレビを見る機会があったが、たしかに最近は日本バンザイ的な番組が多いようだ。
海外から目を背け、都合のよい現実ばかりを見ていては、成長は望めない。
いつまで、ゆでガエルでいるのだろう。

「石がなくなったから、石器時代が終わったわけではないのです。石油が枯渇する前に石油の時代が終わってしまう可能性も、排除はできない」

2007年のアメリカの理工系博士号取得者を出身大学別に見ると、1位は清華大学、2位が北京大学、3位がソウル大学だという研究結果がある。アメリカの大学(4位コーネル大学、5位カリフォルニア大学バークレー校)より多い。6位台湾大学、8位中国科学技術大学、10位復旦大学、11位南京大学、12位ムンバイ大学(インド)、15位上海交通大学。日本の大学は、このランキングの下の方にも入っていない(Patrick Gaulé

「日本人は研究熱心だというけれど、国際ビジネスについては、中国人のほうが研究熱心です。モノづくりの技術は大事だけれど、ビジネスのいくつかの柱の一つにすぎない。日本企業は、外国人の使い方、外国市場のニーズ把握の工夫を、なぜされないのでしょうか」 「より根本的に、日本は世界に関心がなくなっている、それが最大の問題ではないでしょうか。中国の若いビジネスマンの方が、海外に関心が強いですね。世界の動きが自分の商売にも自国の評判にも直結するとわかっています。広い世界を知りたい、行ってみたいと、少し意欲のある若い人はみな思っています。日本は内向きで、覇気がない。世界のことなど関心ない、関係ないというのは現実離れした世界観で、日本の利益にならないのではないでしょうか」

「祖父はラクダに乗っていた。父もラクダに乗っていた。自分はメルセデス(ベンツ)に乗っている。息子はランドローバー(四輪駆動車)に乗っている。その息子もランドローバーに乗るだろう。でもその息子はまたラクダに乗っているかもしれない」  国の命運をわが身で担う人ならではの緊迫感がある、すごい言葉だ。石油に頼った発展は長く持たないと、繁栄の中での油断やごう慢を戒めたものだ。

彼らは技術の優劣はさほど重視しておらず、時には新興国の価格帯に対応すべく、品質をあえて落としたりもした。技術水準それ自体ではなく、その国の市場ニーズに沿った製品を作れるか否かが最重要なのだ

「生徒に、きみたちの活躍の舞台は大韓民国だけでない、世界だ、と伝えるように

「中国人の大量入国への反感、ビジネスの摩擦が、アフリカ各国で最近目立ってきてはいます。でもそれは、インフラ、資源だけでなく中国の衣料・履物、オートバイ、通信機器、農機具が入り込んでいるからともいえます。総合的には、中国が来てくれてアフリカ各国は大感謝と見た方がいいでしょう」  アフリカに詳しい日本の経済官僚にも聞いてみた。 「日本に伝わる話は、日本人が聞いて喜びそうな部分(中国批判)が膨らんでいると思った方がいい。政府庁舎からインフラ、資源まで、日本はとてもできない、欧米や世銀も開始まで何年もかかるやっかいな大規模案件を、中国はさっと作ってくれる。アフリカ各国の発展に大きく寄与し、感謝されているのはまちがいない

・オープンなマインドセット(心構え)、他国文化への共感性、好奇心、世界から学ぼうという謙虚さを持つ人がグローバルリーダーになっていける。 ・日本企業は、海外で学んできた人を正当に評価しない。日本に帰ったら、日本のルールで行動しなくてはならない。海外で得た力を発揮する場所がなくなり、社内に海外人材が蓄積されない

海外に派遣されて「海外の任地で現地に食い込み、ネットワークを開拓する力」、つまり「現地営業力」。それと、「外国へ行って仕事することにハイと手があがる能力」だ。これら二つが日本は低下してしまい、中韓に比べて見劣りする。そして、こういう海外経験が本社にフィードバックされ、集積しシェアされて、会社全体としての「グローバル人材育成力」になる

中国が計算しこだわるのは国益と実利であって、何とか主義ではない。アメリカ的なものをきらい、東洋的なものを好むわけでもまったくな

平均点や「底辺」の高さもさることながら、「一部の人のブレークスルー、イノベーション」が今後はより重要になるのでないだろうか。私の念頭にあるのは、例外的な天才ではなく、どの企業・組織にも5%、10%いる人のことだ。広い関心と意欲、自由な発想があり、社内の人間関係は少し苦手な人が、ヘンな奴とはじきだされるか、組織がその特色を受け入れ能力を発揮させるかだ。企業・組織ひいては国の力が伸びるか否かの分水嶺になると思

韓国だけでなく世界の多くの国では、政治家、官僚はもとより、学者も記者も自国の主張のために「武装」している(知識をもち議論の手法を心得ている)人が多い。日本だけがナイーブな「ノーガード」で打たれっぱなしでは困る。政府の立場と違うご意見も自由だが、「この国では、こう言えばこう解釈されてしまう」という「場の磁力」、そして相手国から「利用される」可能性は心得ていただきたい

一つ目は「知ってもらう」。日本政府の立場や政策について、また日本全般(文化、科学技術、公害克服、長寿、観光、災害対策など)について、誤解なくかつ広く知ってもらう。講演やインタビューや新聞寄稿等、自分が表に出て発信する「直接型」と、世論形成のための水面下のコミュニケーションである「間接型」(後述

二つ目は「心をつかむ」。各種文化イベントを通じた日本発信。優れたアニメや映画や歌は、歌舞伎や能やひな人形は、「日本は良い国」などと叫んだりしない。楽しみながら、登場人物やストーリーを通じ、日本への親近感やリスペクトを育むことができる

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