【本】17038『インドネシア 多民族国家という宿命』水本達也

投稿者: | 2017-03-15

大半を「聞き読み」で読んだ。

インドネシアの歴史について、まとめている。
デヴィ夫人で有名なスカルノ大統領から、スハルト→ハビビ→ワヒド→メガワティ→ユドヨノ→ジョコ(現在)
と続くのがインドネシア大統領の系譜だが、これのユドヨノ政権までを描いている。

インドネシアのバリで起きたテロについても、そのテロリストの活動が古くスハルト政権にまで遡ることが明らかにされている。
コミュニストとの争いを盾に政権の正当性を主張していたが、コミュニストが倒れてからはテロとの戦いを押し出して、ある面ではテロリストを利用しながら政権を維持していたようだ。
インドネシアのテロ組織自体は、日本で有名なアルカイダなどよりも古いそうだ。

面白いのは、現在のインドネシア国民でも大半は「インドネシアにテロリストがいない」と思っているらしいことだ。
これこそが、「多様性の中の統一」という国是にもあらわれた、インドネシア国民の寛容性なのだろう。

ナスティオンが中道路線として提示した国軍は、「文民統制」以上であって、「軍事政権」以下であるという位置づけだった

インドネシアの地方で取材する際、首長や議員、治安関係者など地元有力者に会いたければ、その都市の一番高級なホテルに行けばよいという経験

スカルノは独立戦争終結後、自治州発足の約束を反故にしてアチェを隣接する北スマトラ州に編入した。これに抵抗して起きたのが、アチェの「ダルル・イスラム(DI)運動」だ

同年一二月一四日に採択された東アジアサミット宣言で、サミットは「地域の共同体形成に重要な役割を果たす」と謳われた。「共同体」とはいうまでもなく、将来の「東アジア共同体」を指しているが、「共同体」の頭文字は、小文字の「community」と表記されており、大文字の「Community」ではなかった。これは「共同体」が一般的な概念であり、欧州連合(EU)のような政治体制ではないことを意味する

インドネシアの汚職システムがやっかいなのは、こうした仕組みによる収入が役所全体でプールされ、生活給の一部として職員に配給されていることだ。公認されたものではないが、多くの役所では暗黙の了解事項になっている。二〇〇五年四月、汚職撲滅委員会がこの汚職システムの一端を明らかにした。摘発されたのは、〇四年の総選挙と大統領選挙を仕切った総選挙委員会(KPU)だ。  汚職撲滅委の調べによると、KPUは〇三年後半から〇四年前半にかけて備品納入業者一四社から謝礼金として計二〇〇億ルピア相当を集め、ナザルディン委員長(インドネシア大教授)ら総選挙委幹部や国会議員、財務当局者にばらまいた。ナザルディン委員長はこのうち一二万五〇〇〇ドルを受け取っていた

インドネシアは油田開発の遅れと消費の拡大で〇四年から石油の純輸入国に転落して

指導者の資質は、危機が発生した際の対処の仕方で決まる

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