【本】17035『マッキンゼーが予測する未来___近未来のビジネスは、4つの力に支配されている』リチャード・ドッブス, ジェームズ・マニーカ, ジョナサン・ウーツェル

投稿者: | 2017-02-27

未来予測系の本。
新興国(特に都市部)の台頭、インターネットなどの技術の進化、高齢化による人口分布の変化、グローバル化の4つの力によって、ビジネスが変わる。
1つめ、3つめについては、日本に特に影響がある。

東京では人口増加が続くだろうし、地方の過疎化・高齢化は止めようがない。
移民がいなければ労働力の調達も困難になるので、ビジネスモデルの構築も難しい。

真面目に考えれば考える程、国外に出る以外の選択肢が思いつかない。

「新興国経済では、国単位ではなく、都市といったクラスター単位で市場戦略を立てなければ意味がない」

世界各地で個人、とくに先進国で専門スキルの低い人たちは、成人後も自分たちの親より貧しくなるリスクを負っている。

最初のトレンドの変化は、経済活動とダイナミズムの重心となる場所の移動である。移動先は中国のような新興国市場であり、そうした市場の中の都市である。

第2の破壊的な力は、技術の発展がその範囲、規模、経済的インパクトにおいて、加速し、増大することである。

今日、世界人口の3分の2の人たちが携帯電話を使い、3分の1の人たちはインターネットでコミュニケーションを行っている。(注15)

世界を変える第3の力は、人口動態の変化である。簡単に言ってしまえば、人類の平均年齢が上昇してきているのだ。

労働人口の減少は、これまでの経済成長を維持するのに必要な生産性向上にこれまで以上の重荷を課すことにつながり、逆に、そもそも経済発展の可能性が本当にこれからもあるのか、という疑問を投げかける原因にもなっている。さらに、増加する高齢者の介護は、政府に対して厳しい財政負担の圧力を与えることになる。

最後の破壊的な力は、私たちが「流れ」と呼んでいる、貿易に加え資本、人々それに情報の移動を通じ、世界が相互に結合する度合いの高まりである。

とくに見直しが必要になるのは、消費、資源、労働力、資本、競合といった、重要な課題に関係した意思決定に影響を与える前提である。経験や直観を捨て去れ、と言っているのではなく、私たちの目前で何が起ころうとしているのかを見て、経験や直観を修正しなければならないのだ。つまり、戦略、事業計画の策定、各国市場へのアプローチ、および資源配分に関して、考え方をこれまでとは変えなくてはならない。

エンジニアリング、ソフトウエア開発、ヘルスケアといった分野で、高度のスキルを持つ人材の需要は高止まりしたまま

新興国を助け、力を与えている、あるトレンドが存在している。それが都市化

過去30年の間、世界中の都市人口は、平均すると毎年6500万人増加してきた。この年間都市人口増加数はイギリスの総人口に匹敵し、また都市人口の成長のほとんどは、中国とインドの急速な都市化によるものであった。(注12)

中国の李克強首相はこう語っている。「都市化は、単なる都市住民の増加や都市地域の拡大ではない。もっと重要なことは、産業構造、雇用、住環境それに社会保障といったものすべてを、地方型から都市型へと変えなければならないということなのです」

中国政府は、2020年までにさらに1億人の人々が中国各地の都市へと移動するだろうと予測している。そして現在の予測では、そのときまでに中国の全人口の60%が都市に居住していると想定されている。(注16)

高密度の人口集中地域には、規模の経済、労働の専業化、知識の拡散および売買により、生産性の向上が生まれる。そして、こうした生産性の向上は、ネットワーク効果によりさらに強化される。最近の研究結果によると、都市の持つ高い人口密度により、社会的・経済的な交流機会が生まれ、その結果、時が経つにつれ直線的ではなく幾何級数的な生産性の向上が生まれることが示唆されている。

2010年から2025年の間の世界のGDP成長のほぼ半分は、開発途上国の440の都市から生み出されるものとなるのだ。(注27)

1世代つまり30年前には、インドでは医師の往診は普通のことであったが、都市の交通混雑がひどくなるにつれ、往診はだんだん稀なものへと変わってきた。今日では、ポルティア・メディカル社が技術を駆使し、インド国内の18の都市で往診、ホームヘルスケア・サービスを提供している。同社は、往診の依頼を受けると、GPS地図情報により患者の自宅に最も近い提携契約診察医を選び、その医師が効率的に患者の家を訪問し診察をする。そして往診した医師が患者のデータとカルテをインターネット経由でデータセンターに送ると、予測分析論を用いたコンピュータ診断システムにより患者の健康履歴データを分析し、治療法をフィードバックしてくれる、というサービスを提供している。

インドネシアの首都にとって、交通渋滞により失われる生産性の損失額は、年間10億ドルにのぼると推定されている。(

直接支払いと継続購読料金という課金方式は、オンライン・コンテンツ自体が持つ課金能力を反映し、主流となっていくだろう。このモデルでは、「フリーミアム」価格設定戦略が、ますます一般的になるだろう。つまり、基本サービスは無料で提供し、その上の有料クラスでは、広告を除外する、ゲームのアイテムを提供する、価値ある高度なサービスや特典の獲得が可能となる、といった各種の特典を与えて差別化する方法

スロバキアの新興企業、ピアノ・メディア社は、スロバキア国内の新聞、雑誌など主要媒体のほとんどをカバーしたインターネット購読サイトを開始し、「無料客絞め出しの壁」となるシステムを作り出した。

ウォルグリーン社は11年には薬品通販サイト、ドラッグストア・ドット・コムを買収し、アメリカで最も人気のあるスマートフォン用健康管理アプリケーションを開発した。このアプリを使えば、顧客は処方箋のバーコードをスキャンするだけで処方薬を発注でき、また服用日時が自動的にカレンダーに表示され、服用時間になるとスマートフォンがアラームで知らせてくれるのである。(注75) 現在では、ウォルグリーン社の処方薬の継続発注の40%以上がこのアプリを通じて届き、実店舗とインターネット店舗の複数チャネルにより購入する顧客の売上げが、実店舗のみを利用する顧客の3・5倍になっている。(注76)

1964年から2012年の間の世界人口の年平均成長率は1・4%であったが、今後50年間には年平均0・25%に低下する可能性があり、このトレンドは世界経済と政治に深刻な影響をもたらすだろう。(注

信用格付け会社のムーディーズが2014年に発表した推計によると、65歳以上人口が20%を超える「スーパー老人国」の数は、現在の3カ国(ドイツ、イタリア、日本)から、2020年には13カ国になり、2030年には34カ国に増加する。(注23)

世界中の労働力人口の年間増加率は、1990年から2010年の期間には1・4%であったものが、その後の2030年までの20年間には、およそ1%に低下するからである。(注31) 1964年には、労働年齢人口は地球上の人口の58%を占め、2012年には68%でピークを迎えた。(注32) しかし、その後50年間に、労働年齢人口の比率は61%に低下し、一方で老齢人口(65歳以上)の総人口に占める割合は、2012年に9%であったものが23%に増加する。(

中国では、総人口のおよそ70%が今日働いており、これは世界の中でも最も高い水準の国の一つである。しかし、2013年1月、中国国立統計局は、中国の労働年齢人口が2012年に実は減少していたと発表した。そして、中国の人口の高齢化に伴い、中国の労働力人口も2030年までには67%に低下することが確実だ。私たちの推計では、2030年までに先進国の労働力人口はおよそ3千万人増加するが、これは2010年に比較してたった6%の増加でしかない。(注34)

世界中で労働力人口に占める高齢労働者(55歳超)の比率は、2010年には14%であったものが、2030年までには22%に上昇すると予測される。労働力の高齢化は、先進経済諸国と中国で最も切迫して感じられ、高齢労働者比率は前者では2030年までに27%、後者では31%に達するものと考えられる。(注36)

39) 今後20年の間に、仕事を離れ引退していく人の総合計は、3億6千万人にのぼると推定されている。(注40) こうした引退していく人の約40%は先進経済諸国と中国の引退者であり、そのうちのおよそ3800万人は、大学教育を受けた貴重なスキルを持った労働力なのである。(

看護師が定年退職してしまうということは、たとえば35年間の勤務で積み重ねてきた経験も一緒に持っていってしまうことである。

現在の高齢者は、文化大革命を生き抜き、裁量支出項目にはほとんどお金をまわさない。たとえば、衣料費支出はわずか7%である。私たちが最近行った中国の消費者調査の結果によると、2020年に高齢層に入る現在45歳から54歳の人たちは、上の高齢者たちとは違い、自分たちよりも若い34歳から45歳の年齢層に似た消費行動をとり、たとえば裁量支出にはるかに大きな重要性を置いている。企業は、中国の高齢消費者が何を欲しがっているのかを考え直す必要があるだろう。

新興国からの資金の流出額は、1990年には世界の流出額合計の7%にすぎなかったが、2012年には38%に増加した。(

13万人を超えるバングラデシュからの海外移民労働者が、中東湾岸諸国の中でも最も豊かな国の一つであるカタールに集まっており、その多くは2022年に開催されるサッカー・ワールドカップ関連の建設現場に集まっている。(

次の成長機会を考えるときに、国や地方といった大まかな単位ではなく、もっと詳細な都市や都市の集積で考え、それに従って資本や人材の再配分を行う。

現地の好みやニーズに合わせて製品と価格設定をカスタマイズし、速く低コストのサプライチェーンを築き、さらにコスト競争力があって幅広い層にアピールする価格帯をカバーできるよう、ビジネスモデルの革新を図る。  市場にいたる複数の販売ルートを設計し、コントロールし、それに沿ってブランド、マーケティング、および販売戦略を再考する。  組織機構、人材戦略、事業運営の慣行を、新興国を重点市場とするシフトを反映させて、全面的に変更する。

真に劇的な消費の成長は、ルアンダ、ハルビン、プエブラ、クマーシといった400あまりのミドルウエイト級の都市が生み出すもの

2030年までに、インドの都市人口はおよそ6億人になる可能性があるが、これはアメリカの現在の全人口の2倍近い。

インドには、世界の人口順位による5大都市のうち2つが存在し、そのほかにも100万人を超える人口の都市が68になるだろうと予測されている。

リーマンショックによる金融危機の前、インドの1人当たり年間資本投資額は中国の14%であり、イギリスの4%にすぎなかった。(注6) 何十年もの間、慢性的な投資不足が続いていることは、この国のインフラストラクチャーに与える過剰負荷と、都市の基本的サービスの欠如の状況から明らかである。

全体として、期待される経済成長を可能とするには、私たちの推計では2030年までに、世界中の道路、建物、鉄道、通信、港湾、水利といったインフラストラクチャーの整備と建設に、57〜67兆ドルを支出する必要がある。(注25)

中国の貯蓄率は2000年代初期にGDP比37%であったが、08年には50%を超える水準となった。

貯蓄残高の増加が緩慢になることに対応し、貯蓄率を引き上げる必要があるのかもしれない。

シンガポールの政府系投資ファンドであるGICでは、アジアの新興国市場に焦点を当てる場合、各国の短期的変動とは無関係に、20年後を到達点として見ている。(注73)

つまり、「職に就けない経済回復」は「職に就けない経済成長」へと変わった

2001年と08年から09年にかけてというアメリカの最近の2度の不況において、GDPの減少の98%は雇用の減少によるものだったが、一方で生産性はほとんど影響を受けなかった。

たとえば、慢性疾患患者の管理作業(生活習慣、食事、運動などに関するカウンセリングなど)は、医師ではなく中級スキルを持つ看護士などのヘルスケア従事者に任せることができる。

技術発展が人材供給と人材需要の分断をさらに加速するにつれて、スキルギャップが次々と起こることは避けられず、それが定常状態となってしまう。

イギリスでの調査によると、プライマリーケア専門の診療所の医師とその他医療スタッフの6対4という比率を逆転できれば、効率の改善とケアの質の向上の両方を達成できることがわかっている。また、アメリカでもプライマリーケアの職務の分解と再分担により、ヘルスケア政府予算の伸びを抑えると同時に、こうした革新的手法を許容する方向で医療行為の実施規制の改定が行われたなら、4年制大学の卒業資格を持たない人たちにも新たな就業機会を提供することにつながるだろう。

いる。日産のCEO、カルロス・ゴーンは、深い洞察力を持って次のように語っている。

「ビジネススクールでは、社内の危機に対応できる人材を育てているかもしれない。だが、私の考えでは、外からの危機に対応する備えのほうが重要なのです。外からの危機に備えるうえで問題なのは企業戦略ではなく、リーダーの持つ、戦略をどのように適応させるかを考え出す能力なのです。

かつてフランス・テレコムと呼ばれていたオランジュ社は、携帯電話サービスを使ったホームケアに対する消費者の需要の高まりに応えることにより、成長を続けるヘルスケア産業の一角に食い込もうと、糖尿病や心臓病患者の症状数値の遠隔モニタリングのような、携帯電話によるヘルスケア・サービスを開始した。

先進国は、職務と直接関連する学問分野の訓練を促進するようなインセンティブを提供する必要がある。

いる。2040年までに65歳以上の人口比率が先進国経済で急速に増加し(全体の4分の1になる)、一方で子供の比率は事実上まったく変わらない時代となり、前の世紀に構築された社会のセーフティーネットが、本当に機能するかどうかが試されることになる。

中国では、50年までに公的年金支出が、現在のGDPの3・4%から10%に増加すると推定されている。

公共支出がいずれ負担しきれなくなる「爆弾」を抱えた状態で、しかもそれが悪いタイミングにさしかかってきている。歴史的な低金利時代が終わりを告げ、資本コストが上がる可能性があるからだ。

先進国の多くでは、公的支出がGDPの50%以上を占め、一方、政府の雇用教育やヘルスケアといった準公共部門は、生産性の点で大きく立ち後れている。G8諸国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカの先進8カ国)で政府の生産性の改善が図られたなら、2016年までに年間6500億ドルから1兆ドルの価値に相当する公的支出の削減効果になると推定される。(

OECD全体では、最大の支出カテゴリーは、年金、失業補償、身体障害者補償といった社会保障であり、総支出額の35%以上を占めている。しかし、中国やインドといった巨大新興国では、まだ強固な社会セーフティーネットが構築されておらず、そうした社会福祉施策には15〜20%しか支出していない。韓国では国家予算のわずか13%しか社会保障には支出されておらず、一方で国内産業の振興のための経済的努力に20%以上をつぎ込んでいるが、これはイギリスの同種支出の4倍である。アメリカ政府は予算の21%をヘルスケアに支出しているが、スイスはわずか6%しか支出していない。ギリシャは国家予算の8%を教育に支出しているが、イスラエルとエストニアはそれぞれ国家予算のほぼ17%を支出している。(

同時に私たちが想定しなくてはならないのは、人工心臓に対する需要の急激かつ緊急の増加なのかもしれない。

私たちのうち何人の人が、自動運転自動車の技術と人工心臓の需要という4次的影響を結び付けて考えることができ、どういうシナリオになるのかを計画できるだろう。そんなことは非現実的でばかばかしいと思うかもしれない。だが、これが私たちの生きる世界の動き方なのだ。静かな池に小石が投げ込まれたときのように、一つの産業分野に起こったブレークスルーやイノベーションは、さざ波を立て、それが外に広がっていくのだ。

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