【本】『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット#12

投稿者: | 2017-02-20

人の寿命が伸びたことで、教育→仕事→引退という3ステージの人生構造自体を見直す必要が出てきている。自分はどんな価値観を持っているかを知り、人生の中でいかにスキルや人脈など無形資産を築きアップデートするための時間的経済的投資をするかが重要だ。テクノロジーの進化も相まって、求められるスキルも変化している。直感的判断、対人関係、チームのモチベーションの向上、そして意思決定などのソフトスキルがより重要。筆者らが予想するように、自己投資が重要な世界ではますます格差は拡大するだろう。有形資産に目を奪われて、無形資産への投資をしないことが人生の最大のリスクだ。社会構造の変化・テクノロジーの進化・格差・教育など現在の問題をほぼ一元的に説明しているのが素晴らしい。話題なだけあって良書であった。

人生が長くなれば、人生の途中で変身を遂げることが不可欠になる。それを実践するためには、自分について知ることと、自分とは大きく異なるロールモデルと接することが重要だ。いま30歳未満のあなたは、人的ネットワークを広げて、自分とまるで違う人たちとつき合おう。 113

人生で多くの移行を経験し、多くのステージを生きる時代には、投資を怠ってはならない。新しい役割に合わせて自分のアイデンティティを変えるための投資、新しいライフスタイルを築くための投資、新しいスキルを身につけるための投資が必要だ。 386

大人になっても思春期的な特徴を保ち続けて、高度な柔軟性と適応力を維持することにより、一定の行動パターンにはまり込むのを避けるのだ。 437

OECDの計算によれば、同等の生活水準を目指す場合、大人二人の世帯に必要な所得は大人一人の世帯の1・5倍にとどまるという。 1118

人間固有の能力を二種類挙げている。一つは、複雑な問題解決に関わる能力だ。ここでは、専門知識、帰納的推論の能力、コミュニケーションスキルが必要とされる。 1553
一方、もう一種類の人間固有の能力は、対人関係と状況適応の能力だ。 1561

テクノロジーの進歩によって消滅しない職に就きたいなら、次の二つのカテゴリーから職を探すべきだ。一つは、人間が「絶対優位」をもっている仕事、もう一つは、人間が「比較優位」をもっている仕事である。 1662

資産には、慎重なメンテナンスと投資をする必要がある。このように考えれば、友人関係や知識や健康を資産の一種と位置づけるべき理由が理解できるだろう。 1759

お金が無形の資産を支えるだけでなく、無形の資産が金銭的資産づくりを支える面もある。この相互関係は非常に重要だ。100年ライフに備えるためには、二種類の資産のバランスを取ることが欠かせない。 1820

教育の投資利益率は、インフレ率に加えて15%ということになる★8。 1872

100年ライフが当たり前になれば、人生の早い時期に一度にまとめて知識を身につける時代は終わるかもしれない。 1893

将来的には、イノベーション能力と創造性の価値が大きくなり、アイデアの創造を後押しする教育の重要性が高まる。 1921

第二に、こうした潮流を受けて、人間ならではのスキルと人間による判断の重要性が増す。 1928

医療従事者に求められるスキルの中身が変わると見たほうがいい。情報を取り出すスキルではなく、高度な直感的判断、対人関係、チームのモチベーションの向上、そして意思決定に関わるスキルが重要になる 1931

第三に、長く生産的な人生を送るためには、思考の柔軟性と敏捷性など、どの分野でも役に立つ汎用スキルがいっそう必要とされるようになる。 1935

そこで、勤労人生の途中で専門分野を変更しなくてはならないケースが増えるだろう。  それにともない、学校教育は次第に、あらゆることの土台になる分析能力や思考の原則を築く場になっていく。 1941

知識の量ではライバルと差がつかず、その知識を使ってどういう体験をしたかで差がつく時代になるのだ。 1959

雇用主も、机上の知識だけでなく、実際の問題解決能力をもっている人物を欲しがるようになる可能性が高い。 1963

大きな経済的価値を生む複雑な課題を実行するプロセスではたいてい、ほかの人たちとの相互依存関係が不可欠だ。そこで、きわめて高い生産性の持ち主は、ほかのきわめて高い生産性の持ち主と一緒に働きたがる。 1974

個人の知識が生産性と成果に転換される過程は、会社がもっている資源や組織文化など、その会社に特有の要素の影響を強く受ける。 1989

は、投資銀行のアナリストの成績が同僚ネットワークに大きく後押しされているということだ。その効果は、チームのメンバーが信頼し合い、互いの評判を大切にしているとき、ことのほか大きい。それを裏づけるように、アナリストが移籍しても成績が落ちなかったり、むしろ上昇したりしたケースはほぼ例外なく、チームのメンバーと一緒に移籍していた。 1994

新しい分野に移るときに役立つのは、汎用的なスキル・知識と良好な評判の組み合わせだ。公正さと誠実さ、実行力、柔軟性、そして信頼性に関する高い評判は、さまざまな役割や職で価値がある。 2062

3ステージの生き方により100年ライフで有形の資産と無形の資産のバランスを取ることが難しいとすれば、必然的にマルチステージの生き方が広がるだろう。それは、どのような人生なのか? 2250

第一に、変身を成功させるためには、自分についてある程度理解していることが不可欠だ。 2308
第二に、移行過程の人々を観察してきた研究者たちによれば、変身を遂げるとき、人は新しい人的ネットワークに加わる。活力と多様性に富むネットワークをすでに築いている人ほど、円滑な移行を遂げやすい。 2312
第三に、変身のプロセスが受け身の体験ではないことも明白だ。 2316

そうした新しい経験に対して開かれた姿勢こそ、変身資産に活力をもたらす。 2317

あなたのことを最もよく知っている人は、あなたの変身を助けるのではなく、妨げる可能性が最も高い人物なのである。その人たちは多くの場合、あなたがいままでどおりで変わらないことに最も多くの投資をしている人間だからだ。その点、新しい人的ネットワークに接すれば、新しい価値観、規範、態度、期待に触れられる。それに、そうしたグループのメンバーは、あなたと同じような不安を味わっている可能性が高い。そのような人たちと自分を比べることではじめて、あなたは変身への抵抗を乗り越える「臨界点」に到達できるのだ。 2367

自分についての知識と多様性に富んだ人的ネットワークは、変身の基盤をつくり出す。しかし、変身資産にダイナミズムをもたらすのは、実際の行動だ。過去に例のない大胆な解決策を受け入れる姿勢、古い常識ややり方に疑問を投げかけることをいとわない姿勢、画一的な生き方に異を唱え、人生のさまざまな要素を統合できる新しい生き方を実験する姿勢 2391

余暇時間の使い方について論じる第8章で述べるように、長い年数働く時代に活力を維持するために、週休3日の勤務体系が強力な選択肢となる可能性もある。 2931

単に無目的に生きる若者たちとの違いは、無形の資産を築き、選択肢を増やすために、積極的に取り組むという点だ。具体的には、有益な基礎スキルを身につけ、オンライン上で評判を確立するという形で、生産性資産を築く。 2979

オンライン上の人格と評判は学歴に負けず劣らず重要 2992

このシナリオで見落としてはならない重要な要素の一つは、アイデンティティだ。人生で多くのステージと多くのキャリアを経験するようになれば、そのすべてを貫く一本の柱をいっそうしっかりもつ必要が出てくる。そのような柱があってこそ、人生のシナリオが真の意味で自分のものになるのだ。ジェーンにとって、最初に世界を旅して探索をすることが重要なのはそのためだ。そうした経験を通じて、自分がどういう人間なのか、そしてなにを大切にするのかが明確になれば、人生の多くのステージに一貫性をもたせられる。自分の過去と未来をつなぐ一貫したストーリーをもっている人は、いくつものステージを移行することにともなうリスクが小さい。 3147

男女両方が職をもつことに魅力を感じる夫婦が増える。そのほうが、老後の生活資金や人生の途中での移行と再創造のための資金を蓄えやすいから 3158

明確な自分らしさと強固な倫理基準をもつリーダーの多くに共通する要素の一つが「るつぼ」の経験だった★12。その経験の具体的な内容は、新しい町で暮らすことに始まり、難民キャンプなどまったくの別世界で過ごすことにいたるまでさまざまだった。 3412

長寿化時代には、ライフスタイルにせよ、キャリアにせよ、結婚相手にせよ、自分に最も合ったものを見つけることがとりわけ大きな意味をもつ。 3467

100年ライフでは、家族と友人、スキルと知識、健康と活力などの無形の資産を充実させることの重要性が高まり、そのための投資が必要になる。家族や友人と過ごす時間、教育とスキルの再習得にかける時間、エクササイズをする時間に投資しなくてはならない。長い人生を生きる人には、これらの資産への投資、とりわけ教育への投資が不可欠だ。 4614

誰もが同じスケジュールで長時間働くというのも、産業革命の産物 4653

3章で触れた「同類婚 ★8」(自分と教育・所得レベルが近い人を結婚相手に選ぶこと)が増えている一因 4787

私たちが適切な準備や行動をしないのは、それがもたらす結果を恐れるからではなく、未来について愚かなほど楽観的な考えをもっているからなのだ 5378

長い人生では学習と教育がいっそう重要になり、それに多くの時間を費やす人が増える。 5441

長い人生を生きる人たちのニーズに応えるために、教育機関は四つの課題を乗り越えなくてはならない。それは、新しい学習テクノロジーと経験学習を取り入れること、年齢の壁を壊すこと、創造性、独創性、やさしさ、思いやりを教える方法について深く考えること、そして、テクノロジーの進歩に対応するための実践的な専門教育を急速に拡大させることだ。 5455

人生のさまざまなステージで日々に使える自由時間が増えるにつれて、言ってみればパートタイム教育の重要性が高まるに違いない。  こうした要因に後押しされて、年齢的な均質性の高い社会が解体に向かい、異世代が混ざり合う時代が訪れる。それは好ましいことだ。異世代の触れ合いが増えれば、年齢層の異なる人の間に深い友情が形成され、「我々」と「彼ら」の間の境界が崩れはじめる。そうなれば、人々はいくつもの視点をもてるようになり、世界に対する見方を広げられる。 5489

企業の間では、学生が十分なスキルをもっていないという不満が広がりつつある。とくに物足りないと感じられている資質は、創造性とイノベーション能力、やさしさと思いやりだ。 5500

第五は、(企業にとっては非常に難しいだろうが)年齢に対する考え方を改めて、年齢を基準にするのをやめる 5574

いま最も付加価値の高い産業は、物的資本ではなく、人的資本に基礎を置いている。そのため、高いスキルをもつ働き手の交渉力が強まっているのだ。多くの高付加価値産業で柔軟な働き方と引退の形態が導入されはじめている理由は、まさにこの点にある。 5622

第一に、平均寿命が上昇しているといっても、すべての人の寿命が等しく上昇しているわけではない。所得レベルによる寿命格差が広がっているのだ。豊かな人は、貧しい人よりかなり長く生きている。 5763
第二の課題は、繰り返しになるが、生涯所得の少ない人ほど、3ステージの人生を解体するために必要な柔軟性とスキルをもちにくいという点だ。 5780

不平等の原因が(健康、教育、人的ネットワーク、貯蓄への)投資量の違いにあるとすれば、さまざまな資産への投資の重要性が増す長寿化時代には、むしろ不平等が拡大する恐れもある。20世紀には、政府が無償の教育と子どもの健康に大々的な投資をするようになった。子ども時代は、3ステージの人生では重要な投資の時期だからだ。平均寿命が延びてマルチステージの人生が出現すれば、投資が必要とされる時期がもっと増える。将来的には、そうした投資に政府がどの程度関わるべきかという議論が活発になるだろう。 5815

真の試練は、長い人生を支えるのに必要な無形の資産をどのようにマネジメントするかという点なのだ。

Pocket