外国人ジャーナリストを対象とした人質ビジネスが、いかにイスラム圏の犯罪組織にとって資金源になったかを考察している。
もとは海賊などをしていたが、警戒が厳しくなって成功率が低くなったところで、警戒心の薄い外国人ジャーナリストに目をつけだした。
無警戒なフリーランサーに対する筆者の批判めいたコメントは考えさせられる。
さらに、現在では難民ビジネスもはびこっている。
中東からヨーロッパに難民を送る業者のなかには、イスラム国公認の業者もあるとか。しかも中抜きがない分難民にとっては安心な業者になるというのは皮肉な話だ。
さらにヨーロッパ各国のチンピラ集団も、トラックに難民をつめこんで、国境の端から端まで運ぶという小遣い稼ぎにいそしんでいる様子。
もう少し悪知恵が働く組織は、ボロボロの廃ホテルなどに難民をつめこんで、政府から助成金を受け取っている。
とはいえ、ネズミをとるネコに白黒もないというのが政府の本音だろう。
お金の流れをもとに書いてある分、単純化されすぎている可能性はあるが、それだけにわかりやすい。
愛国者法の成立で、金融機関はドル取引を米国政府に報告することになった。コロンビアの麻薬組織は、ドル決済にかわりユーロ決済を選択。イタリアの犯罪組織と接触し、ギニアビサウからサハラ砂漠を越え欧州へ入るルートを開拓
どの国の政府もじつは人質に優先順位をつけている。そして、人質ごとに払ってもよい金額を決めている。言い換えれば、誘拐組織のみならず政府も人質一人ひとりを値踏みし、この命とあの命に重みをつけているのである。
二〇一一年には、海賊業は年間収入二億ドルを上回り、ソマリア第二の収入源になっている。一位は出稼ぎ労働者の本国送金で、こちらは年間一〇億ドルである。
反政府組織は犯罪組織のバリエーションに過ぎず、彼らが唯一忠誠を誓うのは金である。
欧米人の大半は、英雄的に行動したからではなく、自分が犯しているリスクに無知だったために誘拐されている。
先ほども述べたように、ソトロフにせよ、フォーリーにせよ、人質になった時点では「ジャーナリスト」と報道される彼らの記事が主要紙の紙面を飾ったことは一度もなく、したがって先進国の市民に感動を届けたことは一度もないこと
第一に、大方の人はそもそもシリアのことにあまり興味がない。第二に、無名のフリーランサーの書いたものにはさらに興味がないからである。
フリーランサーがとるリスクは、彼らが得る報酬と比べると、ばかばかしく大きすぎるように見える。大手メディアでさえ、記事一本に二〇〇ドル程度しか払わない。これでは、手配師やドライバーを雇うコストすらまかなえないことが多い。
プロを使わずに駆け出しのフリーランサーを使えば、当然ながら報道の質が落ちることも、重大なデメリット
二〇一四年五月末まで、つまりイスラム国が出現する一カ月前まで、フリーランサーの書くシリア内戦についての記事にイスラム国に言及したものは一つもなかった。このことは、彼らの情報分析能力の低さを雄弁に物語っている。また、
じつはイスラム国は、シリアを起点とする密入国斡旋ビジネスに加え、リビア発のビジネスからも利益を上げている。
密入国斡旋業者は、出航許可を得るために利益の半分をイスラム国に納める。つまり人数点検により納める利益の額が確定するわけである。二〇一五年には、難民一万人につき二〇〇〇万ドルがイスラム国の収入になったと推定される(228)。
難民からすれば、イスラム国が許可を与えた業者はまずまず安心
二〇一五年夏に難民が急増したことを受けて、東地中海ルート付近で悪事を働いていた連中がこぞって密入国斡旋に鞍替えしたという。こっちのほうがはるかに儲けが多いので、他の犯罪が減ったというから皮肉なことだ。たとえばオーストリア警察の発表によると、ハンガリー国境付近で頻発していた電線の盗難がめっきり減ったという。
第二次世界大戦以来の大量難民の発生は、ヨーロッパの小悪党にとって絶好の商機を提供しただけではない。人道支援組織や個人起業家にとっても、利益を手にする機会が目の前に出現したことになる。移民にせよ、難民にせよ、食べなければならないし、着るものも住むところも必要だ。あれだけの人数を移動させるとなれば、その手段もいる。というわけで、巨大な「合法的」産業が出現し、またもや補助金として税金が投じられることになった。
難民事業について調べれば調べるほど、難民が商品と化していると感じざるを得ない。さまざまな組織にとって、彼らは収入源となっている(広報官や公式カメラマンを雇う余裕まである)。これらの事業は難民の悲劇の上に成り立っており、それによってヨーロッパに数十万の雇用を創出しているのである。パートタイムであったり、不安定な雇用であったりするとしても、二桁台の失業率が常態化したヨーロッパ経済にとって、貴重な雇用機会であることはまちがいない。