【本】17004『続・下流老人 一億総疲弊社会の到来』藤田 孝典

投稿者: | 2017-01-16

下流老人の続編だ。新規の情報は少なかったが、前作の頃からまったく社会が前進していないところは憂慮すべき事態だろう。

社会保障負担に苦しむ日本にとっては、社会保障の優先順位を考えないといけないのは間違いない。しかし、「誰の優先順位が低いのか」という議論が全く進んでいない。

高額医療費の上限をあげるなど「社会保障費がかかる群」の自己負担をあげるのか、それとも「高齢者」の自己負担をあげるのか。ゆるやかに後者の方針を辿っているようだが、はっきりと打ち出していはいない。

果たしてソフトランディングできるのだろうか。

下流老人の最大の特徴は〝3ない〟状態にあることだ。3ないとは、すなわち「収入が少ない」「貯蓄がない」「頼れる人がいない」の3つである。

総務省の「家計調査報告」の平成28年4~6月期平均速報によると、単身高齢者(65歳以上)の1か月の平均支出額は約14万円だ。つまり多くの高齢者(月7万~10万円の年金受給者)が、一人暮らしであれば月あたり4万~7万円の不足分を貯蓄の切り崩しか、別の手段で確保しなければならない状況にある。

単身世帯も含めた高齢者世帯の場合は、43・5%が500万円未満の貯蓄しかなく、うち16・8%は「貯蓄なし」の状態

これからの日本では、高齢者も含め、全員が一生涯働き続けなければ暮らしていけない。つまり高齢期の労働が、文字どおり死活問題に直結する社会がやってくる。

「保険料や税を多く支払った分だけ、生活が改善された」という〝受益感〟がない

日本の労働者、特に会社員は「ポータブル・スキル」が低いことが挙げられる。ポータブル・スキルとは、「業種や職場が変わっても〝持ち運び可能な能力〟」のこと。わかりやすい例でいえば、TOEICや簿記といった資格のほか、広義にはマネジメント能力も含まれるとされる。

退職後に「在職中にやっておけばよかったこと」として多く挙げられたのは、「定年後の生活のための預貯蓄」(42・9%)、「定年後も生かせる専門的技術の取得」(32・1%)などだ。

多問題家族には、大きな特徴が2つある。1つは問題の背景に貧困があること、もう1つは問題を抱えている者同士が〝共依存〟の関係にあることだ。

「一億総活躍社会」とは、いわば国の資産たる国民の労働力を増やしたうえで、「総資産回転率を極限まで高めていく社会」であるといえるだろう。

2016年1月に東京都高齢者福祉施設協議会が、全国の特養457施設を対象に行ったアンケート調査によると、13年から15年にかけて、1施設あたりの平均待機者数は17・7%減少したという。また、そのうち95の施設で「(ベッドの)稼働率が下がった」という回答が得られた。

個人資産の役割が生活のリスクヘッジそのものである限り、わずかでも損失のリスクがある投資にカネが流れないのは、当然だ。  結局、個人貯蓄を増やすのか、増税によって公的サービスを拡充するのかは、「誰がカネを管理して我々の生活を保障するのか」の問題であって、貯蓄が増えたから個人が豊かになった(逆に増税したから個人が貧しくなった)ということにはならない。

AEQUITASという団体は、最低賃金を1500円に上げようという運動を展開し、着実に広げている。非正規雇用者の多くは、時給換算で働いており、時間単価がわずか数百円違うだけでも生活の質が大きく変わってくる。正社員であっても時給換算すれば、1500円に満たないなかで働いている人々は多いだろう。

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