【本】16149『優生学と人間社会』米本 昌平, ぬで島 次郎, 松原 洋子, 市野川 容孝

投稿者: | 2016-12-31

優生学というと、ナチスを思い出す方も多いだろう。
しかし、本書はその思考停止をやめ、優生学の歴史を掘り起こした一冊だ。

一九世紀後半になると、優生学が盛んになった。そのきっかけは、意外にも社会保障の充実であった。
イギリスでは一八七〇年に初等教育の義務化が行われ、極貧層の子どもたちが初等教育を受けるようになると、多くの子どもが肉体的・精神的な欠陥があることが問題となった。
当時、精神的な欠陥がある母親は多産と思われており、さらに欠陥が遺伝すると考えられていたため、このままでは社会保障負担が増大してしまうと考えた政府が、産児制限を始めた。

ナチスドイツでも、社会保障の充実のために優生学がとられ、当初は欧米からも賞賛されていた。国の社会保障政策であったために優生学の国有化が進んだ。
そして、民族浄化へとつながっていく。

ドイツに対して、フランスは対照的である。
フランスでは、一八世紀頃から育児に対して医師がアドバイスをするという慣習があった。その名残で、医師の営業として優生学に進展した。
そのために、国有化が進まなかった。これは、徹底した国有化が進んだナチスドイツとは違う。

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