【本】『 結婚と家族のこれから~共働き社会の限界~』筒井 淳也#90

投稿者: | 2016-11-20

”「産む性」としての女性が抱えている様々な問題は、もはや家族、特にジェンダー家族によって解決される必要がない、ということになります。子どもを生み、育てる女性が頼るのは、特定の男性、つまり夫ではなく、社会全体でもよい”
”人々が「男性のみならず女性も雇用を通じて経済的に自立して、自由に人間関係を作る」ためには、安定した雇用が男女に行き渡っていること、家事や育児のサービスがなんらかのかたちで提供されていること、そして高齢者が少なく、それを支えるコストが小さいこと、この三つの条件が必要です。”
”ワーク・ライフ・バランス政策が充実するなどしてフルタイムの共働きカップルが増えていくと、たとえ全体的な賃金格差が縮まっていても、世帯所得の格差は広がります。というのは、所得の高い男性がやはり所得の高い女性と結婚し、他方で所得の低い男女が一緒になることが多いからです。”
”子ども時代からずっと同じ地域で暮らしている人のほうが、都会に出て仕事をしている人よりも、友達と遊んだり飲んだりする機会は多いでしょう。これに対して移動する人は、夫婦でともに行動することが多くなるはずです。現代的な親密性のかたちとして「脱カップル化」が進むかどうかは、ひとつには移動の機会を抑制できるかどうか、地元で暮らしていけるほど地元に雇用を確保できるかどうかにかかっています。”

「家」が大事だった武家の時代に確立された男性重視の視点が、経済合理性を失った現在でも残ってしまっている。筆者は最後のセイフティネットは家族ではなく社会が担うべきだと考えているが、コストを抑えて社会からのサポートを得ようとすれば、地域社会との親密な関係が必要であり、それはグローバル化の流れと完全に逆行する。これまであまり聞いたことのなかった視点で語られており、面白い。

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