【本】16088 脳には妙なクセがある by 池谷 裕二

投稿者: | 2016-07-30

脳科学者である筆者が、様々な研究をまとめた書籍である。

特に興味深いのは、自由意志への考察だ。
“自由意志とは本人の錯覚にすぎず、実際の行動の大部分は環境や刺激によって、あるいは普段の習慣によって決まっている”
どのような感情も、ある条件に対する「反射」でしかない。
意志はあくまで脳の活動の結果であって、原因ではない。
したがって、私達にできることは、適切な反射ができるように、良い経験を積むことだ、というのが筆者の主張だ。

これは人工知能の研究者でも同様のことを言っている方がいる。
AIも、ある条件に対して適切な反射ができるように自己学習を行う。AIと人間の違いに、自由意志があるという意見があるが、実際にヒトに自由意志があるとは証明されておらず本質的な違いはない、という主張だ。

自由意志の有無について議論するつもりはないが、自由意志などないと考えても、確かに矛盾は生じない。
自分の嗜好、夢なども過去の条件から生じるものなのだろう。

その他に興味深いところは以下。
脳は”自分の「行動」と「感情」が一致しないとき、その矛盾を無意識のうちに解決しようとする”
つまり、行動にあわせて感情を変えてしまう。
だから、子供に何かをやめさせたいときには、優しく怒った方がいいらしい。無理矢理ではないために子供の脳が”自分の意志”でやめたと認識するため、そのものに対する興味が減弱するそうだ。

“20歳以前まで高かった幸福感は、20代で一気に落ち込み、40代から50代前半までが最低迷期となります。”
幸福感はU字曲線を描くらしい。幸福感が減ったとは思わないが、不満足感は高まっている気もする。理想と現実のギャップというものか。

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