【本】16084 世界を変えた哲学者たち<世界を変えた哲学者たち> by 堀川 哲

投稿者: | 2016-07-20

マルクス、ケインズ、ハイエク、フロイト、果てはサンデルなど有名な哲学者の思想について、それぞれをざっくりとまとめてある。
詳しく知りたい場合には、各章末におすすめ書籍が記載されているので、興味のある方はそちらを参照されると便利だろう。

マルクス主義 「資本主義の発展を前提にする社会主義」
“パイを増加させるのに必要なことは生産力の向上”
“後進国ではまずは社会を近代化し、資本主義にすることを考えよ、そして生産性の向上を実現せよ、社会主義はそのあとのはなし”

ケインズ 資本主義を支える国家のサポート
“ケインズ以前の伝統的な経済学(古典派という)は「心配はいらない、長い目でみれば景気は回復する、だから政府はなにもする必要はない、市場での自由競争経済に干渉してはいけない」”
“失業なき豊かな社会をつくるためには、国家は投資を管理し、所得格差の少ない社会をつくらなければならない、これがケインズの結論”

ハイエク 「さようならケインズ、こんにちはハイエク!」
個人の自由が最優先課題となる。
『隷属への道』で国家の市場への介入を批判。その点で、「社会主義もファシズムも同類」と。
市場社会を擁護する理由は、市場によって経済成長が行われるからにかぎらず、個人の自由が保証されるから。
“ハイエクは自由主義者であるが、民主主義者ではない。個人の自由を至上のものとするが、しかし民主主義(大衆民主主義)はきらいである。大きらいである。”

ロールズ 『正義論』
“『正義論』の主旨を単純に読めば、言っていることはシンプルなことである。  (1)自由をまもれ  (2)差別はやめよ  (3)恵まれない人びとを助けよ”
“ロールズによれば、正義の社会とは(1)政治的な自由(選挙権や被選挙権)、思想の自由などの基本的な自由、そして(2)公正な競争機会(平等)と格差原理(友愛)、これらが実現された社会”

サンデル コミュニタリアン
“「個人」ではなく(あるいはそれと同時に)、個人の属するコミュニティ(地域・国家)を重視して正義の社会・公正な社会を考える、これがいわゆるコミュニタリアンの共通点”
アメリカで正義論が活発になる理由を筆者は、アメリカが正義を論理的に証明できると信じているからだと指摘する。
対して日本は、議論で片付くものではなく「ほどほど」がいいと”私たちの感覚ですでに知っている”という。したがって、日本では中絶の問題などは”少なくとも、議論するようなことではない”。 “アメリカの社会にはこれがない。だから正義の問題をあたかも論理学の問題を論じるかのように議論できると錯覚している。”
筆者が言いたいことは、”正義論が活発なアメリカが「進んでいる」のではない。むしろ正義論が不在の日本のほうが文化的に成熟して”いるということだろう。

フーコー 「司牧者権力」
アーレント 「生活に余裕のある人びとによる革命」

など。
以下、気になった部分の抜粋。
“革命幻想が消えたところに「正義」の哲学が登場する。それが現代のアメリカ”
“国内のお金持ちから国内の恵まれない人びとにお金は移動する、その仲介者が福祉国家である。この福祉国家、グローバル資本主義のもとではあぶなくなる。金持ちは国外に逃げ、金のない貧乏人がよそからやってくる。国家も会社とおなじで、収入以上の支出はできない。福祉国家の崩壊は時間の問題かもしれない。”
“正義を語る人間を不用意に信用するな、これが歴史の教えである。そういう人間はたいていのばあい、偽善者であるか、たんなる能天気なのである。”
“友愛とか連帯といった観念を安易にふりまわしてはいけないというのが一番の教訓”

人工知能やIoTなどで自動化がますます進む今、人間の労働時間が減るとするならば、新マルクス主義のようなものが台頭してもおかしくないだろう。
個人の自由が保証されることが現代国家としては必須条件だとは思うが…。

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