【本】16011「雇用身分社会」 by 森岡孝二

投稿者: | 2016-01-22

派遣労働者の酷使、人件費の切り下げが及ぼした問題についての本です。

就業前健診、電離放射線健康診断などで除染作業員に接することが多いために興味を持ちました。
健診は、企業側は「就業前に健康診断をしている」、作業員側は「医者に『就業可』とお墨付きをもらった」と、お互いの言い訳のために存在している検査です。

このような健診のとき、私が彼らから聞くのは「とにかく忘れずに『就業可』と書いてくれ」という言葉です。
医療者としては健康を優先すべきと思い込みがちですが、彼らにとっては働くことが最優先です。コントロール不良の慢性疾患を抱えている方も多いですが、働かなければ薬も買えません。

先日、「検査値が異常で働けない」という相談を受けました。基準値は超えていますが、臨床的には正常範囲内で、クリニックでも「就業可」と判を押されています。
ですが、「元請け会社に『***以上だとうちでは働かせない、もうほかの人に頼んだから』と言われた」と。

別にその値が少し高いくらいで仕事に差し障りはありません。医学的根拠は全くないのですが、企業側はリスク回避のために自主規制を設けたようです。

除染作業員は健康状態が悪い、と安易に主張することは、このような自主規制を広げて、雇用の機会を奪うことになるのではと危惧しています。

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