【本】17067『模倣の経営学』井上 達彦

投稿者: | 2017-04-24

一言でいうと、アナロジーの重要性を説いた本だ。
イノベーションは既存の技術の掛け合わせにすぎない、ということはよく知られている。
本著は、その事例について紹介している。読みやすくて面白い。

大事なのは、こういった事例をいくつ知っていても、自分で編み出すことは難しいこと。
とはいえ、様々な分野にアンテナをはっていなければ知ることもできない。
本質というのは、業界を超えて共通するものなので、他業界について知ることは重要だ。

月並みだが、常にそのビジネスや専門分野のことを考えて、どんなことでも結びつけて考えることが、ひらめきにつながるのだろう。

医療もサービス業であり、遠隔診療を利用したウーバー方式だったり、医療施設の空きベッドを利用したAirbnbだったり、様々なことを応用した広がりはありそうだ。

実際、レンタルDVD/CDショップのTSUTAYAを創業した増田宗昭氏は、レンタルビジネスを金融業界に喩えて、そのビジネスの本質をつかんだという

こういった発想で共通性を見いだすことが大切なのだ。なぜなら、共通の特性のある商材を扱う事業の仕組みというのは、大なり小なり同じだからだ

ブラケティング  社会学では、このような作法のことをブラケティングという。ブラケティングとは日本語に直訳すると「括弧でくくる」という意味である

フィールド調査では、異なる文化世界で、自らの価値観では理解できないような物事と遭遇したとき、拙速に判断をするのではなく、ひとまず括弧でくくって判断を保留しようという態度が奨励されている4。意識的に〝あたりまえ〟を明確にし、それを括弧でくくって横に置いておくことで、先入観でものごとを判断したり評価したりしないようにできる

「紳士服チェーンや百円ショップなど、気になったところは何でも見に行きます。料理と違って、経営の仕組みはどの業界からも学べます。むしろ、飲食とはまったく異なる業界のほうが、固定観念を持たずに見られる分、ヒントを見つけやすい1」  正垣氏が実践しているようなことを経営学では、「知の探索」(exploration)という。これはもともと、どのようにして企業がイノベーションを引き起こすかという点を説明するために生み出された概念だ

その上で視察のコツとして、異業種から学ぶことを強調している。 「まず視察する店選びだが、自店と業態や経営姿勢が違うタイプの店の方が違いがわかりやすい。ちなみに異業種でも大手のコンビニエンスストアやスーパーマーケットで売れている商品を調べると、消費者の志向が分かり参考になる。ユニクロなど、専門店から得られるヒントも多い8

①カタリスト=触媒してくれる

②コネクター=つないでくれる

③イネーブラー=実現してくれる

④プロモーター=周知してくれる

模倣研究をリードするオーデッド・シェンカー教授も、過去の出来事に注目すべきだという。 「自分のテリトリー以外のところに目を向け、地理的にも視野を広げること。小さくて目立たない企業だけでなく、失敗した企業を探すこと。そして、最近の出来事よりも過去の出来事から学ぶようにすることが求められる21

・ポジションの取り方 ・提供している顧客価値 ・課金の仕組み ・主要業務の活動 ・鍵となる経営資

ある。ハブ・アンド・スポークというのは、航空事業などでよく話題になるが、自転車の車輪のように中軸になる拠点(ハブ)から放射線状に配送網(スポーク)が伸びるような輸送網のこ

優良企業に共通してみられた条件とは、①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④ひとを通じての生産性向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ、という8

エクセレントカンパニー調査の手順から導くことができるのは、「必要条件」に過ぎない。必要条件というのは、「ある事柄が成立するために必要な条件」である。たとえそれが優良企業になるのに必要な条件であっても、それだけ満たせば優良になるのに十分だとは限らない

私にとって、「模倣する」というのは次のようなニュアンスを感じさせるものである。 ・「知識移転する」というよりも自分のこととして向き合っていて、 ・「参考にする」というよりも真剣で、 ・「拝借する」というよりも、自分のものにしようという意志を感じ、 ・「アナロジーする」というよりもリアルで、実行を伴うものである。

模倣できそうでできないビジネスとして、公文教育研究会(以下KUMON)に注目する1。

KUMONの学習は、学年を追い越したところから真価が発揮される。ところが、教えられてその水準に達した生徒は、たとえ学年を越えていても自分で学ぶ力がついていない。

もし、迅速な2番手(Fast Second)3を目指すのであれば、同業のパイオニアが成功すると思ったらすぐに模倣すべきであろう。

市場の立ち上がりと同時に参入できれば、マーケットシェアのかなりの部分を占めることができるからである。難しいのは、そのパイオニアが〝成功するか否かの見極め〟にある。成功を見届けてから模倣していては間に合わないこともある。

同じく攻めの姿勢で競争に対応するにしても、じっくり取り組んだほうがよいこともある。それは、後から挽回するだけの経営資源に恵まれている場合だ。

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