【本】17145『介護危機―「数字」と「現場」の処方箋』宮本 剛宏

投稿者: | 2017-12-26

これは面白い、というか良書。データがふんだんに散りばめられているので資料として使いやすい。
実名こそ出していないが、介護甲子園への批判もある。

公定価格であり介護サービスへの付加価値はつけられないため、筆者はサービスの標準化とオプションサービスで差別化を図っている。

2025年には介護人材の需要が約253万人となるのに対し、現状推移からの供給見込みは約215万人で、約38万人が不足するという推計が出ています(厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」2015年6月24日)。

現在の介護業界における人材動向で顕著なのは、生活リズムを狂わせる夜勤を回避する傾向がある

福祉先進国と言われるスウェーデンでは今でも同様の制度となっていて、介護施設に入所する場合には行政の承諾を得る必要があります。したがって、日本に比べて在宅で介護を受ける高齢者が多い

介護保険の利用者自己負担分を含めた総費用は、2000(平成12)年度の3・6兆円から2013年度には9・2兆円に増大しています。(

特養が24時間介護であり、介護度が上がっても看取りまで入所できる終身施設だから

介護保険施設以外の介護サービスを「居宅サービス」に位置付けています。介護付き有料老人ホームは、「ホーム」という名称によって施設サービスと思われがちですが、介護保険上では「居宅サービス」に分類されます。 

他にも、居宅サービスに分類される介護施設として、近年急増した「サービス付き高齢者向け住宅」があります。

法律によってサービス内容が定められる介護保険事業は、フランチャイズのメリットはほとんど生かせない業種

介護の専門教育を受け介護経験のある人材は、当社においても離職率が低く、個々の介護に真剣に取り組む姿勢

厚生労働省の失業者対策で介護の資格を取って、他業界から介護職として働きはじめた人材は、残念なことにすぐに辞めてしまうことが多い傾向

介護報酬改定で報酬が下げられつつあるデイサービスなどは、介護職の給与も下げられる

2000年から2013年までの間に、介護職員は約50万人から約170万人に増えました。(図表2‐1「介護人材の需給バランス」) 介護社員の数は年々増加し、既に170万人に達していますが、同時に要介護者数も増え、2025年には240万人の社員が必要と言われています。

一方で、要介護者数は、218万人から564万人にまで増加しており、その増加数は介護職員の2・8倍です。

図表2‐2を見ると、2004年から2008年までに2倍以上に増加し、2010年に1・31倍まで下がってから、2013年には1・82倍と増加しています。この数字を全産業と比較すると、常に2倍以上の数値となっています。特に、雇用が回復しつつある、近年における介護人材の不足が顕著に見てとれます。 次に図表2‐3を見ると、事業所における人員の不足感は、訪問系の介護事業所のほうが施設系より高くなっています。(

私は、今の介護業界には現場の介護を担当する介護職だけでなく、現場の介護職を育成し指導する管理職、そして介護事業を大きくしていこうとする経営者、という3種類の人材が不足していると考えています。

先に述べたように若年層が減少傾向にあるということは、夜勤を担う人材が不足していることが推測

ひとつに、労働者人口が減っており、人材獲得競争で介護業界が他業界に勝てない現状があるということ

2つ目が、介護職における非正規雇用の比率の高さがあげられます。 総務省の統計によると、2015年の全産業における労働人口のうち非正規雇用の比率は37%であるのに対し、介護業界では、非正規雇用が5割以上を占めています。とりわけ、訪問介護に従事する非正規雇用の比率は高く、約8割にもなっています。(

3つ目が、日本の介護業界で、外国人労働者がコミュニケーションの壁に阻まれて、介護職として活躍できないという現状

管理者教育への投資が、各介護企業の成長を決めるといっても過言ではない

一般的に精神論で社員のモチベーションを上げようという手法は、「やりがい搾取」「ブラック企業のポエム」などと報道で批判されています。

新しいビジネスモデルや雇用・労働環境レベルを事業所の評価基準にするならばともかく、イベント会場におけるプレゼン内容を評価するだけでは、「やりがい」や「楽しさ」を演出しているだけに過ぎず、本当にこのイベントで介護のイメージを変えることができると信じているのであれば正気の沙汰ではありません。

介護に関係する歳出は厚生労働省の社会保障関係予算に限りません。国土交通省が2012年から実施しているサービス付き高齢者向け住宅整備事業には、建築主への補助金だけで毎年300億円以上の予算が盛り込まれている上、固定資産税や不動産取得税の優遇措置も整備されています。 厚生労働省の推計によれば、2025年度の介護給付費の総額は、2012年度の倍以上である約20兆円にも達するとされています。

一般的な訪問介護員の平均年収が260万円という中で、ケアリッツの正社員の平均年収は381万円、勤続3年以上の場合は平均年収が441万円と、業界ではトップクラスの水準

ケアリッツ介護事業部の新卒採用は、管理職志望のマネジメントコースと、専門職志望のプロフェッショナルコースに分かれています。

私はこの加算算定には消極的です。 その理由は2つあります。第一に、加算算定の項目が顧客満足に直接つながるとは限らないからです。

理由の2点目は、事業所加算を算定しているという理由で、他社のケアマネジャーから避けられる可能性があるからです。

介護サービスに付加価値を付けることが難しい中で、どういった点を利用者に評価してもらえばいいのでしょうか。 それは、提供する介護サービスレベルが「いかに統一されているか」という点です。

NPO日本ネットワークセキュリティ協会の報告書によると、2015年の個人情報漏えい事故は799件、約500万人の個人情報が漏えいしたとされ、想定損害賠償総額は2500億円

漏えい媒体は、意外にも紙媒体が411件と半分以上を占め、漏えい原因は、「紛失・置忘れ」が243件もあり、次いで「誤操作」が206件、「管理ミス」が144件と続き、全体の7割以上を占めてい

その理由は、妊娠中には介護職から事務や施設での調理業務などの身体的負担の軽い業務に異動してもらっているため、同業他社と比較しても出産を理由に退職する社員は少ないからです。在宅介護は夜勤がないという強みもあって、出産後はほぼ全員、育児休暇を取得後に介護職として再び職場に復帰しています。子育て中の介護職については、短時間勤務や勤務地を優先的に選べるなど、会社としても子育て支援制度を整備してきました。

私が考える事業者公表システムは、介護保険を利用するすべての介護事業者が会社情報を必ず記載するシステムであり、人材募集をしているかどうかを記載する欄を加えることによって、求人サイトにもなるシステム

それゆえに、介護労働者から信頼される公表・評価制度にするためには、行政による統一した制度の設立が求められます。

介護保険施設の中でも、常勤医師の配置される老人保健施設はある程度の医療ニーズに対応できます。ですが、医療処置を行ったとしても、介護保険から支払われる報酬は変わらない、という施設側が医療処置には消極的にならざるを得ない実情があるので、過度の期待は禁物です。もうひとつの特養は、日中看護師が配置されているものの、夜間は不在のために、たんの吸引や胃瘻の処置が必要な要介護者の受け入れ枠をそれぞれ定めています。

施設介護から在宅介護への転換促進です。 図表4‐5を見てみましょう。(図表4‐5「サービス種類別1人当たりの月額介護給付費(万円)」)

ちなみに、福祉国家スウェーデンでは、ちょっとした援助が必要な高齢者には、行政による「認定を必要としないサービス」があります。これは、高齢者の転倒を防ぐために設けられた制度で、電球の交換やカーテンの設置など「何でも屋」のようなサービスを、無料もしくは時間あたりの費用で実施していて、75歳以上の高齢者なら誰でも利用できるそうです。(奥村芳孝『スウェーデンの高齢者ケア戦略』筒井書房)

介護内容は「住環境」によって大きく左右されますが、介護を受ける本人が意思決定できない場合、「どこで介護をするのか」という判断は、家族に委ねられることが多い

ちなみに高齢者向け住宅の実態調査によると、入居者に占める要介護3以上の割合は、「住居型有料老人ホーム」が48・9%ともっとも多く、次いで「介護付き有料老人ホーム」が41・5%、「サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)」が30・7%でした(野村総合研究所「高齢者向け住まいの実態調査」2016年3月)。サービス付き高齢者向け住宅に入居している方で要介護3以上の構成比は、要介護3が13・1%、要介護4が10・8%、要介護5は6・8%と

「高齢者向け引越しサービス」は、高齢者向けの保証サービスと、見守りや緊急時対応などの支援サービスをセットにした、高齢者専用の不動産賃貸ビジネス

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