【本】17135『資本主義の終焉、その先の世界』水野和夫、榊原英資

投稿者: | 2017-12-17

分析はわかるが、得られる結論が私と違う。
「ゼロ成長が普通になる」、「少し不便な方がいい」というのはなんとなく聞こえがいいが、老人の戯言に過ぎない。
現在の日本の社会保障はすでに借金を抱えているので、これを維持するには成長が不可欠だし、社会保障が破綻して困るのは今の高齢者ではなく将来の高齢者。
この立場の人からは、世代間闘争を防ぐ建設的な意見が欲しい。

原発事故による避難者は二〇一五年三月九日時点で、「計一一万九〇三〇人、うち県内は七万一七六一人、県外は四万七二一九人」にものぼっています(河北新報二〇一五年三月九日)。

いずれも危機は超低金利時代を招来することにあります(図一)。最初の危機における金利はビザンチンにおいて六世紀から八世紀にわたって高くて八%、低くて六%でした。その前のローマにおいては三世紀初めから四世紀末にかけて一二%台でした。第二の危機においては一七世紀初頭のイタリア・ジェノバにおいて一六一九年には、一・一二五%まで低下して、当時としては史上最低利回りの記録となり、「利子率革命」といわれました。

この記録は第四の危機に突入した二〇世紀末の日本と二一世紀のドイツが更新するまでおよそ四世紀にわたって破られることはありませんでした。第三の危機が終わった直後にイギリスは大不況(一八七三~一八九六年)において金利が二・一%まで低下しました。

二一世紀の最大の課題は「蒐集システム」をいかに混乱なく終わらせるかという点

今回の危機が「一種の生理学上の均衡化」にあるのですから、失敗すれば、アナーキー状態に陥ってしまいかねません。 まずは、先進国内で「蒐集する人」と「される人」をつくらないこと

近代になると資本主義は市場を通じて資本(富)を、一方、社会主義は計画(中央指令)を通じて生産力を「蒐集」する

石油を支配した欧米が産業革命(動力革命)によって大量の物質を「蒐集」するようになったので、市民社会が西欧社会に定着することができたのです。このように考えれば、中東や北アフリカの例をみればわかるように、アメリカが民主化を押し進めようとしては失敗を繰り返しているのは、これらの地域に生産力が欠乏しているからです。

二一世紀に生産性を一段と向上させようとすれば労働力を減らすしかないのですから、ITを切り札に成長しようとすればするほど、中間層の仕事がなくなり、近代=中間層の時代を崩壊さ

彼らは神による時間と知の独占を不満に思い、自分たちのものにしようと、「時間の商品化」(ル・ゴッフ『もうひとつの中世のために』加納修訳、二〇〇六年、白水社、二〇二頁)と「学問の商品化」(前掲書、二〇二頁)を推進していった

異次元金融緩和政策はデフレ対策というよりは、現政権の本音は株高を維持して内閣支持率を高めることにあると考えれば、むしろ消費者物価が二・〇%に達しないほうがいい

五〇年後には世界デフレ、世界ゼロ成長、世界ゼロ金利が正常な状態となる可能性が高い

新人類世代(一九八四年以降生まれ)とその親の団塊ジュニア世代(六九~八三年生)の間には世代間の「距離」がほとんどないのです(

先進国経済が成熟化して「セイの法則」(供給みずから需要をつくる)が成立しないようになると、国内で非正規労働をつくりだし、貧困問題が生じるのは資本主義の必然

二一世紀になってゼロ金利が先進国で定着しているのは、もはや追加一単位の投資は利益を生まない(限界利潤率がゼロ)ということであり、二〇年近くゼロ金利が続いているということは、一〇年の工場や三〇年のオフィスビルの平均利潤率もゼロとなっ

中世がそうであったように、二一世紀は権威と権力を分ける必要が出てきた

当然利潤率、つまり、資本の収益率もとてもピケティのいうように四%超というわけにはいきません。一〇年国債の金利が先進国で二%以下ということは、資本の収益率も二%以下、しかも、日本やドイツ等はさらに低いということです。

たしかに、五〇年前、一〇〇年前は資本家の時代であり、資本が大きな収益を得られた時代なのでしょう。しかし、現在はまったく状況が異なります。問題は資本の収益率が高すぎることではなく、収益率が極めて低くなって、資本主義が窒息状況に陥ってしまっていることです。

インド木綿の大流行とそれに対抗したイギリスの保護貿易政策、輸入代替政策が産業革命に結びついていっ

人口減少、老齢化局面に入る中国に対して、インドの人口構成は若く、二五歳以下が五割以上(第二三図)で前述のように人口は急速に増大

が、二人以上の世帯でうち勤労者世帯の金融資産の統計の中央値は、二〇〇二年八一七万から二〇一四年には七四〇万円に下がってきている。

中国は、鉄板のところから最終製品の自動車まで、すべて設備が過剰だということ

ほとんど中国の一〇年国債利回りはこの一〇月末に三・〇%を下回りました。一〇月の消費者物価上昇率が一・三%なので、実質長期金利は二・〇%以下となっています。実質GDP成長率と実質長期金利は長期的にみれば概ね等しくなるので、中国の実質経済成長率は公式統計の七%ではなく、せいぜい二%くらいに鈍化してきていると推測されます。

原 結局、便利さばかりを追求すると、世界がつまらなくなる。少し不便なほうがいいんだ(笑)。

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