【本】17104『オスとメスはどちらが得か?』稲垣栄洋

投稿者: | 2017-08-21

動物系の本。
繁殖に焦点をあてて、細菌や植物からヒトなどの哺乳類に至るまでの繁殖戦略について考察している。
赤の女王仮説は有名(「とどまるためには走り続けなければならない」)で、どの動物も激烈な繁殖競争に勝ち抜いた結果が現在の姿だ。
だからどんな動物も須く尊い。

ヒトがサルの時代から一夫一妻だったというのは面白い。
「知能」を武器にするためには「子育て」がセットとなる。
だからこそ、「子育てによる知能を発達させる」戦略のためには夫婦そろっての子育てが重要だったのだろう、というのが筆者の考察だ。

浮気の正当化のために、「オスは精子をばらまくのが本能だ」という決まり文句があるが、それはヒトとして生きる以上は適切な戦略ではなかったのだろう。

大腸菌にはF因子を持つF+の個体と、F因子を持たないF-の個体がある。

つまり、大腸菌は雌雄があるとされる。

生物が変化し続けなければ生き残れないことを説明する代表的な仮説が、進化生物学者リー・ヴァン・ヴェーレンによって提唱された「赤の女王仮説」

そこにとどまるためには走り続けなければいけないのである。

好んで自家受粉を行なう植物もある。 ひとつは、人間が改良した作物である。

雑草と呼ばれる植物も、多くが自殖を行なう。

実際には自殖のみを行なうのではなく、自殖も他殖も行なうことのできる両掛け戦略を取るものが多い。

オスは、メスに精子を与えるためにある。そう考えれば、余計なものは失くして、その機能のみに特化したチョウチンアンコウのオスは、まさに男のなかの男

一夫多妻であっても、オスとメスが同じ数になった時に、オスとメスの条件は平等になるのだ。そのため、ハーレムを作り、オスがあぶれることがあっても、オスとメスは同数になっていく

に、そっと忍び込んで隙を見てメスを奪い取る戦略は、生態学では「スニーカー戦略」や「サテライト戦略」

ベニザケの川にとどまったものはヒメマス

川魚のヤマメはサクラマスが海に下らずに川にとどまったものであり、アマゴはサツキマスが川にとどまったもの、イワナはアメマスが川にとどまったもの

派手な羽のオスが選ばれ続けると、ついには、生存に不利なまでに美しくなってしまうというものである。 これが、進化生物学者ロナルド・フィッシャーによって提唱された「ランナウェイ仮説」

コアジサシの住む環境は子育てが難しいのだろう。長年、子育てをしてきたベテラン夫婦は子育てが上手で、ヒナの生存率も高まるという。そのため、同じパートナーと子育てを繰り返すのである。

オスはいつもロマンチスト(浪漫主義者)だが、メスはリアリスト(現実主義者)で

母親からもらった遺伝子は2分の1の確率、父親からもらった遺伝子は共通なので、姉妹どうしの血縁度は4分の3になる。つまり、親子の血縁度よりも、姉妹の血縁度のほうが高いのだ。 人間の親が自分の遺伝子を守るために子どもを愛するように、アリは自分の子どもを産み育てるよりも、姉妹を大切にするほうが、自分の遺伝子を残せることになる。そのため、メスは働きアリとして粉骨砕身働くのだ。

ギンブナの卵はあろうことか、ドジョウやコイなど他の魚の精子でも、その刺激で発育して、子どもが生まれる。

実は、オシドリも、他のオスにメスを奪われないように、ぴったりとついてメスを監視しているだけなの

「子育て」は、強い生き物だけに許された特権である

群れを統率したり、パートナーを得たりした時に、圧倒的な強さでメスの信頼を勝ち得たオスであれば、生まれてきた子が自分の子であると確信できる。そんな強いオスが子育てをするのである。

鳥は一夫一妻制が多く、90パーセント以上もの種類が一夫一妻制である。そして、夫婦で協力して子育てをするのも特徴

哺乳類は、牛や馬のように生まれてすぐに立ち上がって走り出すような、成長した子どもを産むものもあるが、鳥の産んだ小さな卵からは目も見えず、羽も生えていないような未熟なヒナしか生まれない。そのため、未熟なヒナを育てることが必要となるのである。

生物は、集団として得か損かよりも、その個体にとって得か損かに従う

そこで考えられるのが、オスが子育てを押し付けられているという説である。

チンパンジーは父系社会で、群れで生まれたオスは、群れを離れることはない。

ニホンザルは母系社会で、群れで生まれた血縁関係のあるメスが群れを構成し、オスはすべて群れの外から来た〝よそ者〟である。

人間は「一夫多妻」でも「乱婚制」でもない、一夫一妻として進化したと考えられている

人間が群れのなかで一夫一妻制を維持できたのは、高度なコミュニケーション能力によって、集団のなかで「家族」という小さな単位を確立させたからなので

哺乳類は母親が体内で胎児を保護し、母乳で子どもを育てる。しかし、子どもを教育したり、ルールを教えてしつけたりするのは父親の役割という動物もいる。

「知能」を生きる武器とした人間は、生きていくために学ぶことが多い。そのため、あえて発育を遅くして、すぐに大人にならないようにしているのだ。

人間が「知能」を武器にするためには、「子育て」は不可欠だ。そのため、「知能」と「子育て」はセットで発達を遂げてきた。そして、この「子育てによって知能を発達させる」という戦略に重要だったのが、「一夫一妻制」を基礎とした「家族」であったと考えられている。

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