【本】16116『第五の権力』 エリック・シュミット

投稿者: | 2016-10-20

Googleの元CEOであるエリック・シュミットが語った、将来の姿。

『音声書き出しが主流になれば、「書き言葉」も変わるかもしれない。やがて私たちは段落の形で話すようになるのだろうか、それとも書き言葉が話し言葉のパターンに似るのだろうか。』
音声入力が発達すれば、言語文化すら変えていくだろうという発言である。

『今はビザ規制や送金に関する規制などの官僚的な障害のせいで、業務の分散化が思うように進んでいない分野でも、デジタル技術を利用した解決策を通じて、こうした障害を無視するか、回避できるようになる。たとえば厳しい外交制裁を課された国で活動する人権組織の職員は、モバイルマネーの振り込みやデジタル通貨だけで給料を受けとれるだろう。』

コネクティビティがあれば、モバイル機器やインターネットを利用できる子どもたちは、現実と仮想どちらの世界でも、学校生活を送れるようになる。ただし、後者はプライベートな時間を使って行う、非公式な経験ではあるが。

『これからの進歩のカギとなるのは、「パーソナライゼーション」である。
これは医療でもそうである。

以下、医療面で出てくる流れである。
『携帯電話の診断機能(バーコードを読みとるように、携帯電話を身体の各部にあてて状態を調べる)は、すぐに普及し、目新しさがなくなる。』
『マイクロロボットを循環器系に注入して、血圧を監視し、心臓病の初期症状を検出し、早期ガンを発見する。祖父の新しいチタン製人口股関節にはチップが埋め込まれていて、歩数をカウントしたり、血中インスリン濃度を監視して糖尿病を早期検知できるほか、激しく転倒して助けが必要になれば、緊急連絡先に自動通報してくれる。鼻に埋め込んだ小さなチップは、空気中の汚染物質や風邪の初期症状を知らせてくれる。』

『「インテリジェントピル」や鼻腔インプラントは十分安価になり、ビタミン剤やサプリメント並みに身近になる。近いうちに、モバイル機器を使って個別化医療システムを利用できるようになる。システムは各種の装着物から収集したデータをもとに、異常を自動的に検知し、診察の予約をとるよう患者を促し、症状や健康指標に関する重要なデータを(患者の同意を得たうえで)担当医に送信する。』
『科学が着実に進歩しているのに、処方薬の重篤な副作用は、いまだに入院や死亡の大きな原因となっている。これまで製薬会社は、医薬品開発に関して「最大公約数的」アプローチをとってきたが、薬理遺伝学という新分野の発展とともに、事情は変わるだろう。』
『こうした取り組みを先導するのは、硬直化した医療制度に風穴を開けようとする、個人やそのほかの非政府主体である。』
医療は今後大きく変わる。これは間違いない。そしてその原動力は、個人や非政府主体であるというのは完全に同意だ。

『この動きはすでに始まっている。今も途上国全域で、技術系ベンチャーや非営利団体、起業家が、モバイル技術によって困難な問題を解決しようとする「モバイル医療」革命を通して、制度の改善を推進している。携帯電話によって、患者と医師をつなぎ、医薬品の流通状況を監視し、医院の診療圏を拡大するといったことが、すでに実現しているのだ。』
これはもう早い者勝ちという状況だ。ニーズは高い。

『匿名でいることの真の代償は、「疎外されること」だろう。』
インターネットの匿名性についての記載だ。結局、匿名でないfacebookの方が、日本では主流になっている。

『性教育よりも先に、プライバシーとセキュリティの教育が必要になる。親が子どもを諭すという昔ながらのやり方が、今後も功を奏するだろう。』
『親はオンラインの検索結果のランキングが、子どもの将来に及ぼす影響を考えて、名前をつけるだろう。目先の利く親なら、SNSのプロフィールをあらかじめ確保しておいたり、子どもの名前のドメイン名(たとえばwww.JohnDavidSmith.com)を購入しておくのは当然として、オンラインで見つけやすい名前やあえて見つけにくい名前をつけるだろう。』
まさしく名前のSEO対策だ。

『一部の人たちは2種類のメディアを使い分け、ニュース速報は新しいプラットフォームから、その他のニュースは既存のメディア機関から得るようになるだろう。』
ここまではすでに言われている。
意外と、旧来のメディアは残るとシュミットは指摘する。
『実際エリート層は、質の悪い報道と情報が大量に増えるせいで、既存報道機関に頼ることがかえって増えるだろう。』
なぜなら、
『オープンで規制されない情報共有プラットフォームの強みは、あくまで即応性であって、洞察力や深みでは主流メディアに太刀打ちできないのだ。』

途上国に、デジタルメディアが浸透することで、新たな問題が生じることも指摘している。
『最近のテクノロジー企業は、仮想世界の市民に対する貢献と責任を、ことあるごとにアピールしている。だが、さらに50億人がオンラインにつながるうちに、彼らや彼らの抱える問題が、すでにつながっている20億人に比べてずっと複雑で、一筋縄ではいかないことがわかってくる。 「次の50億人」の多くは、貧困にあえぎ、検閲を受け、安全でない状況に暮らしている。』
『テクノロジー企業は、業界の活力を削ぐような無用の政府規制を回避するためにも、プライバシーとセキュリティ上の責任を、十分以上に果たしていく必要がある。これが第1の対処戦略』
『第2の対処戦略は、法的措置に焦点をあてるものだ。』
『第3の、社会全体による対処戦略については、まず地域社会やNPOなどの非国家主体が、データ革命の影響にどのように対応するかを考える必要がある。』
特に何かを共有したり、あとでそれを参照したい場合は、活動や通信の記録を、検索可能なかたちで保存しておく必要がある。それに残念ながらP2P通信をもってしても、侵入や監視を完全に防ぐことはできないのだ。

『昔と違うのは、彼らが不満をオンラインでさらけ出し、意図してかどうか、テロリストの採用担当に自分を売り込むような行動をとってしまうことだ。』
『「テロリズムを打ち破るのに本当に必要なのは、2つのことです。法の支配を確立することと、人々に機会を与えること』
『若者こそが、テロ集団がターゲットとする層なのだ。』
コミュニティに疎外された若者がテロリズムに走る、これはISと重なる。
やはり、テクノロジー企業はこの危険は認識していたのだろう。

今後は、認証という課題が生じる。何によって認証されたコンテンツが最も価値が高いと認められるか。
それはおそらく、政府などの公的機関ではなく、集合知など多数の意見ということになるだろう。

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