【本】16109『2052』 by ヨルゲン ランダース

投稿者: | 2016-10-13

今後の40年間で起きることについて書いた、未来予測の本だ。
気候変動やエネルギー問題への対策として、世界がGDPのうち数%を投資に回さざるをえず、その結果、国民一人あたりの消費は停滞する可能性が高いと筆者は考えている。
そして、現在のうちからその投資活動が可能であるのは、『民衆の意見を無視できる、未来志向の独裁体制だけ』として、中国を挙げている。
つまり、中国がGDPの数%を強制的に再生可能エネルギーなどへの投資に振り分けることで、エネルギー分野や環境分野での成功国になる可能性がある、というのが筆者の主張だ。
経済成長がしばらく続くようであればこれも可能だろうが、「民衆の意見を無視」した政策を数十年も続けることはいくら中国でも困難ではないだろうか。

その他にも面白い項目がいくつかあった。

○人口について
まず、人口構成について。人口構成は、最も確実な未来予測だと言われている。
筆者の指摘も、人口構成に関しては世界の数十年先の構成となっている日本の実情によく合うものだ。

世界全体では、負担率(潜在労働力の各人が支えなければならない人の数)は、この40年間、減り続けているそうだ。
その理由は『高齢者が増加しても、子どもの減少によって相殺され支えられる人の数はあまり変わらない』ことが理由だという。

『このバランスが崩れれば、社会は迅速に対応し、年金給付年齢を引き上げるだろう。給付年齢に近づいている人々は反対するだろうが、その意見が聞き入れられることはない。』
うーん…日本ではとっくにそのバランスは崩れているのだが。迅速な対応、はできていない。

さらに、都市化が進む。
『2052年には、私たちはホモ・サピエンス・ウルバニス(Homo sapiens urbanis)になる。世界総人口の80%が都市に住むようになるからだ。先進国ではおよそ90%、発展途上国では75%が都市の住人となる。』(トマス・N・グラッドウィン)

労働力については、
『ポスト工業化社会では、労働力の大半が農業や製造業から解放され、サービス産業と介護産業に向かう』
介護が、労働集約型産業の残り少ない分野だと考えているのだろう。これも、ロボットの進歩によっては労働力が不要になるかもしれないが。

『労働力が減少して生産性が停滞あるいは低下するために、世界のGDPの成長は止まり、のちに着実に低下していくというのは、多くの人にとって予想外の展開だろうが、私はこれが21世紀後半の中心的な特徴になると思っている。しかしその動きが始まるのは2052年以降』
これは、日本でもうすぐ起きることだ。いや、すでに起きていると言っていいかもしれない。
家庭やコミュニティの活動が少なくなるため、
『これまで家庭や集落でなされていた活動が、貨幣経済の活動に組み入れられていく』
在宅介護が困難となり、公的介護への依存が増加するのと同じ現象だ。

○エネルギーについて
筆者は、再生可能エネルギーの拡大を予想する。しかし、これは投資額次第だろうとも。
『世界全体の発電量に占める太陽光発電の割合を現在の0・1パーセントから20パーセントないし25パーセントに伸ばすには、巨額の投資が必要となる。IEAの試算によると、太陽光発電設備だけで10兆ドル以上かかる(注8)。送電網の拡張と電気の貯蔵にはその数倍のコストがかかり、総額を賄うには、今後40年間、毎年世界全体のGDPの約1パーセントを支出しなければならない。』
しかし、低炭素社会への圧力から、これが実現するだろうと筆者は予測する。

同じく低炭素社会への夢と言われていた原子力発電については、
『原子力発電所はテロ攻撃に弱いということだ。今後10年以内に、世界のどこかにある原子力施設がテロ攻撃に遭うことは避けられないだろう。安全保障の専門家の多くは、これまでテロに攻撃されなかったことのほうがむしろ驚き』
これは、本当にそうだと思う。福島第一原発事故後の混乱を考慮すると、テロ組織が次に狙うのは原子力災害の誘発が最も手っ取り早いだろう。

また、『エネルギー専門家のエイモリー・ロビンスはこう指摘する。「現在、61基の原子力発電所が『公式に』建設中である。しかしそのうちの12基は、20年以上も『建設中』であり、43基は正式な稼働開始日が決まっていない。61基のうち半分は遅れている。45基は4カ国の政府による不透明な電力システム計画に属し、自由市場の取引によるものではない」』
福島第一原発事故の影響もあり、国によっては原発計画が頓挫している地域も多いことを指している。

じっくり読むのがおすすめの本だ。

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