【本】16071 地域再生の失敗学 by 飯田 泰之, 入山 章栄, 川崎 一泰, 木下 斉, 林 直樹, 熊谷 俊人

投稿者: | 2016-06-26

地域再生が補助金頼みにならないようにするためにはどうすればいいのか、ということを述べた対談集。
ざっくりまとめると、本気で動くリーダーが必要だというのが結論。

まずは経済面から。

シャッター商店街を改革するといっても、実際は不動産収入で暮らしていて、固定資産税軽減などが目的で「自営業」を続けている場合も多いようだ。この辺りは休耕田の問題と共通している。
そのままで放置されているというのは、そのままで誰も困っていないからだ、と。

一方で地方も、交付金が入ってくるために地価をあげて固定資産税を回収するインセンティブがない。そもそも上記のような減免措置が多すぎて、”日本では地価上昇と固定資産税収増にあまり相関がない”。

また、ヒトとヒトの交流についても述べる。
“トランザクティブ・メモリーの量と質を向上させるために効果的なのが、フェイス・トゥ・フェイスのインタラクションであることが経営学の実証研究で示されつつあります。”
したがって、対面コミュニケーションの重要性が見直されていると。

しかし、
“仕事だけでなく生活まで含めて見ると、実は東京には人材は大して集積していないとさえいえるかもしれません。毎日二時間以上も移動のためだけに費やしていたら、インフォーマルなコミュニケーションを行う時間もなくなってしまう。東京は人が多すぎるがゆえに、人の集積によるメリットを生かすことができていない”
たしかに、”元気のいい中核市のほうが、圧倒的に暮らしやすい”。

今後は、”特定産業間のスパイキーなつながりも増えてきそう”と語る。

そして、人材交流が進まない業界として、”一番ダメな業界は大学”と言う。
“東大の院生同士の指導教官や専門分野を超えた共同論文がすごく減ってしまっている”のは事実だろう。他分野との共同研究を進めるためには、相手への尊敬、理解が必要だ。大学では、そのための交流が進まない仕組みになってしまっている。

学生運動対策の名残で”東大構内の建物と植木の配置は、なるべく人が集まれないように配慮されている”というのは本当かわからないが、雰囲気として閉鎖的になっているのは事実だろう。

他に気になったところ。
“経済学の立場からいえば、現役世代の人を地域に惹きつけるのは生産活動の活発さや賃金の高さ”
“ある省庁の仕事を請け負うシンクタンクに勤務していたのですが、やはり発注者の意向に沿った数字を出すのが仕事で、そうでないと仕事がもらえず、淘汰されてしまうという現実”

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