【本】16034サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠 by ジリアン・テット

投稿者: | 2016-04-07

サイロ・エフェクトとは、組織が大きくなることで、各部署の専門分化が進み、結果としてお互いの連携がとれなくなり、組織全体としての効率性が下がるという現象のことです。
日本語で言うならば、「タコツボ効果」と言えるでしょうか。
ただ、題名が「タコツボの恐怖」だと売れないだろうな。

ソニーがデジタル機器の王者から陥落したのは、このサイロエフェクトに陥ったからだと指摘されている。

“一九九〇年代には西欧のビジネススクールで別の考え方(あるいは流行)が広がった。経営コンサルタントや専門家は、巨大企業は単一の事業体ではなく、独立採算性の個別事業の集合体として経営するほうが好ましいと主張するようになった。独立した事業ユニットをつくることで透明性や効率性を高め、責任の明確化が図れるという発想だ。”

しかし、その結果として、”新たなサイロの経営陣は、カンパニーの財務に責任を負っていることを自覚すると、ライバル企業だけでなく社内の他の部門からも「身を守ろうと」した。他の部門と斬新なアイデアを共有しなくなり、優秀な社員の他部門への異動も避けるようになった。部門同士が協力しなくなり、実験的なブレーンストーミングや、すぐに利益を生まない長期投資も手控えるようになった。誰もがリスクを取ることに後ろ向きになった。”

facebookなどはこれを避けるために、新人研修を一緒にやる、ハッカソンなどのイベントを盛んにやるなどを通じて、全体での連携を保とうとしている。しかし、facebookでこのようなことが実現できるのも、彼らが元から同質の集団だからだろう。facebook全体がサイロに陥る危険性は残っている。

医療の項は面白い。クリーブランド・クリニックは、日本と同じように、医師の給与が全員共通の給与体系だそうだ。

“二〇〇五年時点ではアメリカの医師のうち、五〇人以上の大規模組織で全員共通の給与体系の下で働いているのは四・五%に過ぎなかった”

したがって、医師がどれだけ稼いだかが反映されないため、医師は稼ぐことよりも治療の質を上げることに集中できるとのこと。

その結果、患者中心の医療を実現するために、診療科の分類を変更しようという試みを行っているようだ。

実際に、関節痛を診察するときに、リウマチ科、整形外科がチームでみるなどの試みが行われているようだ。

医学の発展にともなって、現在の診療科の分類が、治療体系、患者のニーズにそぐわなくなっているということもあるだろう。

私が専門医をとりたくないのは、現状の専門医資格が、患者のためになるとはどうしても思えないからだ。
それこそ、”医者とは何者かを定義する、きわめて強固なギルドシステム”としか思えない。
患者ニーズの変化、AIの進化などの要素によって、既存の疾患分類や診療科の分類が大きく変わる時代が迫っているのではないか。

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