【本】『失敗の本質』戸部良一ら #7

投稿者: | 2016-01-17

”すでに作戦中止は不可避であった。にもかかわらず、両者とも「中止」を口には出さなかった。牟田口によれば、「私の顔色で察してもらいたかった」といい、河辺も牟田口が口に出さない以上、中止の命令を下さなかった。”

”日本軍の失敗の家庭は、主観と独善から希望的観測に依存する戦略目的が戦争の現実と合理的論理によって漸次破壊されてきたプロセスであったということができる。”

”「分化(differentiation)」と「統合(integration)」という相反する関係にある状態を同時に極大化している組織が、環境適応にすぐれているということである。” ”…問題は、このような「分化」をいかにして「統合」するかである。”

”完全な均衡状態にあるということは、適応の最終状態であって組織の死を意味する。逆説的ではあるが、「適応は適応能力を締め出す」のである。”

”日本軍は結果よりもプロセスや動機を評価した。”

”およそイノベーション(革新)は、異質なヒト、情報、偶然を取り込むところに始まる。官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。”

”しかも日本軍エリートは、このような日本的官僚制組織の有する現場の自由裁量と微調整主義を許容する長所を、逆に階層構造を利用して圧殺してしまったのである”

各戦闘の詳細な状況を読み進むに連れて、自然と日本軍の欠点が浮かび上がってくる。最後の沖縄戦まで読む頃には、こんなばかげたことで何人が亡くなったのだろうと思って悲しくなった。しかし問題は、ここに分析されていることが全く古くなっていないということである。非常に面白かった。良書。

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