【本】戦後経済史 私たちはどこで間違えたのか

投稿者: | 2015-09-17

これは素晴らしい本です。
筆者は、第2次世界大戦を生き延びています。
防空壕のなかで、他の人よりも少し先に入っていたら窒息死していたかもしれない、という状況下です。

この経験後、筆者は官僚となり、官僚の視点から戦後の経済復興を目の当たりにします。
そこで行われたのが、官僚主導での護送船団方式でした。
政府主導で、重工業化という長期的な目標のため、短期的な利益に合わなかったり、黒字構造になっていない弱い企業であっても、補助金でサポートして推し進めました。

その結果、重工業化には成功しましたが、企業体質や産業構造、経済体制は古いままとなりました。
ここに現在の日本経済の根本的な問題があると筆者は指摘します。

現在でも、リーマン・ショックでダメージを受けた企業のためにエコカー減税、エコポイントを導入したりなど、やっていることは昭和、バブル前と変わりません。
これでは企業のイノベーションが起きようはずもありません。困ったら政府に働きかけて補助金をもらえばいいのですから。

現在、アジア各国で重工業化を推進するために日本をモデルにした政策が行われています。
確かに、人件費が低い間は、低コストを売りにして工業化を進めるには日本式はある程度効果があるでしょう。
しかし、その後が問題です。IT技術が進んだ現在、低コストによるアドバンテージはすぐに消えてしまいます。
その結果、古い体質の企業だけが残ってしまうと、日本同様世界的な競争からは乗り遅れてしまいます。

分散型の情報システムが基本となっている現在、護送船団方式はもはや通用しません。
本当の意味で競争力のある企業を育てるためには、補助金ではなく、市場で競争してもらうことでしょう。

企業も私達も、自立しなければいけないと感じます。
ぜひ、多くの方に読んでいただきたい一冊です。

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