【本】16051 消費するアジア 新興国市場の可能性と不安 by 大泉啓一郎

投稿者: | 2016-06-18

少し古い本だが、アジア諸国がどのように発展しているか、またどのように発展していくかについて書いています。

アジア諸国の特徴は、人口が多いこと、さらに少子化が進んでいることです。少子化になると、初期は労働人口の相対的な増加から経済発展を後押しする効果がありますが(人口ボーナス)、いずれ高齢人口の相対的増加により、経済発展が妨げられます。現在の中所得国の問題は、経済発展が進む前に高齢化に突入する可能性があること(中国では『未富先老』と呼ばれます)です。
しかし、日本の東京、中国の北京・上海やタイのバンコクのように世界的なメガシティとなることができれば、周辺都市からの人口吸収効果があるので、人口ボーナスの恩恵を長く蒙ることが可能です。

経済発展が格差の解消に与える影響も興味深い。
「クズネッツの逆U字仮説」と呼ばれるもので、国が低所得にある段階では、成長にともない、しばらくの間、不平等化が進むものの、やがてある所得水準に達すると、それ以降は不平等の度合いが小さくなります。
従って、横軸に所得水準、縦軸にジニ係数をとると、ジニ係数は上に凸のトレンドを描きます。
したがって、現在の中所得国の各国は、さらに高所得化への変換を図り、農村部の貧困層との格差の解消を図ります。

そのためには、以下の3つが重要と筆者は主張しています。
①多様化した産業構造から特化した産業構造への移行
②労働と資本の投入の絶対量に依存した成長から技術革新を基盤とした成長への転換
③義務教育を含めた基礎教育制度の整備から大学や研究機関などの高等教育の促進を通じた人的資本開発へのシフト

中所得国になったアジア諸国が、高所得国になるのか、それとも高齢化に足を引っ張られて経済発展の足踏みになるのか。世界の経済にも影響を与える内容です。

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。