”毎日なんてずっと、なんていうことはなかった。この小さな漁村で、寝て、起きて、ごはんを食べて暮らした。調子が良かったり、悪かったり、TVを見たり、恋をしたり、学校で授業を受けたりして、必ずこの家へ帰ってきた。そのくりかえしの平凡をぼんやりと思い返してみるとき、いつのまにかそこに、ほんのりあたたかく、さらさらした清い砂みたいな何かが残る。”
子供であった自分との別れ、子供から大人への変化の一瞬をとらえているように読んだ。決して戻ってくることのない平凡で幸福だった毎日を、懐かしく切なく思い出す。優しく美しい描写だけれど、こちらは逆にやけにリアルに感じる。