佐藤優氏との対談本をきっかけに、また自身のプライベートなイベントも関わって、動物の生殖活動に興味を持った。
そして手にとったのがこの本。
期待通り、めちゃくちゃおもしろい。
人間の女性が、排卵日を隠したのは、子殺しを防ぐため、この説は竹内氏以外の書籍でもみたので、現時点での結論と言えるだろう。
なんと実にうまくできているのだろう。
人間に父性はあるのか、というのが自分のなかでの疑問ではあった。
しかし、動物の世界においては、エサを家庭に持って帰ることも立派な子育てである。
父性のない動物とは、メスが妊娠するやいなや家を飛び出し、次のメスを探すタイプであり、人間界においては鬼畜でしかない。
そう考えると、子供を励みに仕事に打ち込む父親と、育児休暇をとって新生児の世話を分担する父親と、どちらがヒトとしての父性なのだろうか。
もちろん、ヒトの場合は、本能よりも、社会的な圧力が大きいのはわかるが、本能にインプリントされた形は果たしてどちらなのか、興味は尽きない。
動物とは、種のためでも、集団のためでもなく、自分の遺伝子のコピーをいかに残すかという命題の下、行動する存
根強い信仰があり、人々が何ら疑いを抱くことなく使っている「種の保存」、「種の繁栄」という言葉ですが、実は既に四〇年ほど前に否
クマの仲間などのメスには「着床遅延」という現象があります
しかし、一頭だけ生まれた子の育児を放棄してしまえば、その年の交尾期に早くも発情し、次の子をつくることができるのです。とすれば二頭、あるいは三頭を得られるでしょう。こちらの選択の方が断然有利に自分の遺伝子のコピーを残すことができ
なぜメスは、わざわざ痛い思いをさせられるのでしょう。 それはこれらの動物では、交尾の刺激によって排卵が起きるからです。これを交尾排卵といいます。つまり、オスはメスに激しい痛みを味わわせることによって、より効率よく排卵を起こさせようとしているのです
タガメではオスが卵の世話をします。夜になるとオスは水中から何回も上がってきては、茎や杭に産み付けられた卵に口に含んだ水をかけたり、水で濡らした体を密着させたりして乾燥から防ぎます。昼には、直射日光が当たらぬように、卵に体を覆い被せさえもするのです
タガメではこんなふうに卵の父親が自分であるというかなり確実な保証がある。そうであるからこそ、オスが卵を世話するというなかなかありえない行動が進化することになっ
無理もないことなのですが、昔の人は〝妊娠〟し、〝出産〟するからには、それは当然メスだと考えました。タツノオトシゴは安産のお守りとされ
ガルフ・パイプフィッシュ
一回目のメスが大きいと、それでもう大満足なのでしょう、二回目の繁殖で、相手のメスがどうあれ、よく中絶する傾向がありました
で、一回目のメスが小さいと二回目の繁殖で、相手のメスがどういうメスかとは関係なく、あまり〝中絶〟しない傾向にあ
動物は普通、メスの方がオスよりも多くの投資をするので、厳しく相手を選ぶのも、繁殖の主導権を握るのもメ
カンガルーが産むのは一頭なのに、タスマニアデビルの子の数は二〇~四〇頭にも及びます。育児嚢の中の乳首の数はたった四つだというのに。 そこでこの〝先着四名〟の座をかけ、「米粒」たちが産道の出口から育児嚢まで、命がけのレースを展開することになります
少なくとも熊井さんらの研究では体の大きさが同じだと共食いは起きず、体の大きさが違うと起きることがわかっ
最も混み合っていて、そのメンバーたちに血縁がないグループで最も共食い屋が多く現れ、その割合は八%にも達し
鳥の世界では、浮気がやりやすく、オスもメスも浮気に超熱
自分ではなく、もう一方のオスの方がよく交尾し、彼の子の割合が高いと思われるときほどエサやりの手抜きをす
メスの怪しい行動。卵の受精の確率が高い時期に、彼女が自分に隠れてどれほど秘密の行動をとっていたかということ。怪しさ、イコール浮気の可能性なのです。 オスはそんな複雑な情報を、随分長い期間にわたって記憶することができ
ハヤブサはヒナを育てている途中でつがいのどちらかが死ぬなどしていなくなると、すぐさま代わりがやってくるのですが、継父(あるいは継母)は義理の子にあたるヒナをいじめることはありません。それどころか実の親のように振る舞います
ゆっくり構える戦略が成り立つのは、猛禽類の寿命が長いか
ヒメヤマセミには時々、第一ヘルパーと第二ヘルパーがいます。第一ヘルパーはつがいが前の繁殖シーズンにつくった息子。自分の縄張りを構えることができず、遊んでいても仕方ないので親の繁殖の手伝いをしているというわけです。 第二ヘルパーは、つがいとは血縁のないオス
つがいのオスが死んだときなどには、メスがこの第二ヘルパーとつがいになることが結構あるのです
先住民の振る舞いは、どうしたら自分の遺伝子のコピーがよく増えるのかを最大限追求する、という動物に共通する命題の下で、人間が長い時間をかけて進化させてきた心理に基づく行動であるということです。さらに肝心なことには、彼らの社会では、そういう行動を後押しするような文化や風習、掟も同時に存在しているのです
いずれにしても育てようとしても育てきれなさそうだとか、既に相当なところまで育った上の子の生存が危うくなりそうなとき、ということらし
アヨレオ族では生まれたばかりの子を穴に埋めたことのない女はいないと言います。そして先の二人の女性のように、若いときほど子を殺す確率が高く、年をとるに従いその確率は減っていく。三九歳以上になると、まったく殺さなくなります
一日に五回未満の授乳では、排卵の抑制効果は薄く、五回以上でだいたい抑制され
乳飲み子がいるのに交尾ができるという生理的な仕組みを持っている点で、人間の女は、ほ乳類として画期的な存
不義密通がばれると男には制裁がくだされますが、不思議なことに女の方はおとがめなし。間男だけが一定のルールの下、制裁を受けます。寝取られ男とその兄弟から、「殺さぬ程度」の暴力を振るわれ、この間彼は抵抗してはならないことになってい
皮肉にも、新生児として死亡するケースが減った分、精霊として天に返すケースが増えたのではないかと国分さんは推測してい
周りが妻の親族だらけという状況が本領を発揮します。母系制社会なので、女は離婚によって夫を追い出しますが、子育ては自然と周りがサポートしてくれ
社会が母系制であると、争いが少なく、穏やかなものとなる傾向があります
母系制社会には一つの問題点があるのです。 他の部族との争いに弱
女がもしダンナの子ではない子を産んでも、これもまた一族の子であることに変わりがなく、歓迎される。ダンナとしては腹立たしく、地団太を踏んだとしても、妻の一族に押し切られる形になります
母系制社会の優れた点の数々を目の当たりにすると、何とか母系制社会に回帰する道はないものか、現代はもはや男が生身で、それも部族どうしなどで戦争をする時代ではないのだから、と考えたくなってしまうのです
です。そして継父
虐待しているとき、実の母は見て見ぬふりをするか、間接的に関わることになります。 人間の女は乳飲み子を育てながらであっても、〝発情〟して男を受け入れ、子が殺されないようにするという大変画期的な生理的機能を備えました。それなのになぜ、こんなふうに子が虐待されるがままにしておくのでしょうか
それは、新しい男との今後の繁殖を有利にし、優先したいから
アメリカで児童虐待のリスクが最も高いと言われるのがマムズ・ボーイフレンドと呼ばれる男、つまり内縁の夫です。それは世間から隠され、女の親族にすら紹介されていないような、隔離された存在。「周囲の目」という抑止力が効かないために余計にリスクが高ま
で母親が若いほど子殺しのリスクが高いこともわかりました。若いほど望まぬ妊娠や経済的な問題が多く、また繁殖のやり直しがきくか
日本では女が三〇代後半になると再びピークが現れます。しかも殺される子は、第三子である場合が最も多いとされている。つまり、既にいる子の生存を確かなものにするため間引きをするのではないかと考えられているのです
アヨレオ族でもカナダでも、母親の年齢とともに嬰児殺しの確率は下がっていくのですが、実を言うと、三五歳あたりでいったんちょっとだけ上がる。デイリーとウィルソンはその例数が少ないからと問題にしていませんが、日本と同じような事情から間引きが行なわれている可能性があります
論点一 赤ん坊が男にとって、本当に自分の子かどうか ステップ・ファミリー(継父、または継母と継子の家庭。内縁関係も含む) 里親が里子を育てる 論点二 赤ん坊の質がどうか 低体重児、早産 多胎児 障害 論点三 現在の環境は、子育てにとって適切か 望まぬ妊娠 貧困 育児不安 周囲からの孤立 子の年齢が上のキョウダイと接近している 母に新しい男が登場 キョウダイが多すぎる 現代ならではのリスク 産後うつ 虐待の連鎖 家庭内暴力(DV
母系制社会は子の虐待がかなり防がれる社会ですが、子を養育する男が、その子の実の父ではない場合がある、という虐待が発生する最大のリスク要因を依然として残しています。しかし、モソ人の社会ではこの問題さえも、完全に解消されてい
本能の喪失などではありません。動物としてごく自然なこと、恥ずかしいことではないと確認するのです。人間は他の動物とは違う、もっと高等だ、などと思い込み、自分を追い詰めるようなことだけはしてはいけない