この本は面白い。ものすごくおすすめだ。
筆者は、仕事をディープ・ワークとシャロー・ワークに大別している。いかにディープ・ワークを効率的にできるようにするかについて焦点をあてたのが本書である。
ディープ・ワークを行う時間は、一日三時間から四時間でいい。しかし、その間は集中力を高めるために、携帯やネットなどのジャマなものをシャットアウトする必要がある。
実践方法がかなり具体的に書いてあり、大変参考になる。ポイントは、日頃のタスクをこなす時間とは別に、集中する時間を設け(大抵は早朝か深夜)、それを習慣化することだ。
現代は、情報のシャワーが激しい。メールの返信やSNSのチェックでなんとなく忙しいが、自分自身のスキルは向上せず何も生み出していない、という状態になりがちである。
そのような問題意識を持っている方に、本書は大変おすすめだ。
ディープ・ワーク:あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。こうした努力は、新たな価値を生み、スキルを向上させ、容易に真似ることができない。
シャロー・ワーク:あまり知的思考を必要としない、補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。
情報経済の現在、価値ある人間でいるには、複雑なことを素速く身につけるすべを習得しなければならない。
一日三時間から四時間、週に五日、中断されることなく、焦点を定めて集中することで、多くの価値ある成果を生み出すことができる。
ともに働き、複雑化する機械から有益な結果を引き出す、予言者めいた能力を持つ人々は成功する
成功する態勢が整っている二つのグループを取りあげた。インテリジェント・マシンを使って創造的な仕事ができる人々と、各分野のスターの人々だ。
新しい経済下で成功するための二つの能力 1.難しいことを素速く習得する能力 2.品質も速度も一流レベルの生産能力
何かをつくり出さなければ、成功しないということだ──どれほどスキルや才能を持っていたとしても。
「注意力の光線を一点に集めて、あなたの心をレンズにせよ。あなたの精神を、何であれあなたの心の中の、有力で夢中にさせるアイデアに全面的に集中させよ」 このアドバイスは、修道士で倫理学教授、アントニン-ダルマス・セルティランジュが二〇世紀初めに著した『知的生活(The Intellectual Life)』からの引用である。
「意図的な練習」に必要なこと
1.あなたが高めようとしている特定のスキル、または極めようとしているアイデアにしっかりと注意を集中する。 2.最も生産性の高いものに注意を向けつづけるために、あなたのやり方を正すことができるようフィードバックを受ける。
難しいが重要な知的作業をまとめて、長期間、中断することなくつづけることだ。
グラントは実質的に、平均的な教授以上に長時間仕事をしてはいないと思う。それでも他の人以上のものを生み出している。それは、まとめてやる方法のおかげだと思う。
あなたの注意力を奪う三つのトレンド
ここ数年のもう一つの大きなトレンドは、インスタント・メッセージ(IM)の台頭だ。
三つ目のトレンドは、ソーシャル・メディアを支えるあらゆる種類のコンテンツ・プロデューサーが求められていること
生産性の代用としての多忙:仕事において生産力や価値があるとはどういうことかを示す、明確な指標がなければ、多くの知的労働者は工業における生産性の指標に戻っていく。つまり、目に見える形で多くのことをなすことである。
私たちの頭脳は、〝注意を向けるもの〟に基づいて世界観を組み立てる。
年配被験者の生活環境が若年被験者よりもよいからより幸せなのではない。脳がネガティブなものを無視し、ポジティブなものを満喫するようになっているから幸せなのだ。意識をうまく管理することで、現実は何も変わっていないのに自分の世界を改善した
「最高の瞬間は通常、人の身体や心が自発的に限界まで引き伸ばされ、何か困難でやりがいのあることをなしとげたときに生じる」。チクセントミハイはこの精神状態を〝フロー〟と呼ぶ。
想像以上に、人々は仕事をしているとき幸せで、リラックスしているときそれほど幸せではない。
ディープ・ワークの習慣を身につけるカギは、〝ルーティン〟と〝儀式〟である。
明確に決められた一定時間、ディープ・ワークに打ち込み、残りは他のすべてのための時間
ディープ・ワークに取りかかる最もたやすい方法は、それを単純な一定の習慣にすることだ。言い換えれば、ディープ・ワークに取りかかる時と場合を決めることに、〝リズム〟をつくり出すことだ。チェーン方式は、その好例になる。
チャペルがリズミック方式を取ることにしたのは、このように執筆が遅々として進まないからだった。そこで毎朝、五時半に起きて論文に取り組むことにした。七時半まで執筆をすると、朝食を摂り、その日の分の論文執筆を終えた状態で仕事に出かけた。早い時間に論文を書き進めることができるのが嬉しく、彼はまもなく起床時間を四時四五分にし、ディープ・ワークの時間がさらに増えた。
個別の課題のために、一定の時間枠を設けること。
儀式は、仕事をきちんと進めるためのルールと方法を備えていなければならない。例えば、インターネットの使用を禁止する、あるいは二〇分間に書く字数のような基準を決めるなどして、集中力を鍛える。こうしたシステムがなければ、何をすべきで何をすべきでないかに迷い、十分熱心に取り組んでいるか常に見きわめなければならない。これは不必要な意志力の浪費である。
広い共有区域とそこにつながる防音の研究室という組み合わせは、「偶然の幸運な出会い」と「独りでの熟考」の両方が可能な、革新的なハブアンドスポーク構造を生み出した。
目的達成に必要な戦略を見きわめることは簡単な場合が多いが、企業をつまずかせるのは、決まった戦略をどう実行するかを考え出すことだ。
4DXには、二種類の測定基準がある。〝遅行〟指標と〝先行〟指標だ。遅行指標は、あなたが最終的に向上させようとするものを表す。
先行指標は、いますぐコントロールできて、長期的な目標にプラスの影響を与えるような行動を向上させること
ディープ・ワークに専念している個人にとって、そうした先行指標を見きわめるのはたやすい。〝あなたの最重要目標のためのディープ・ワークに費やされる時間〟である。
意思決定は無意識の心に解決を委ねたほうがよい場合がある、
意識的頭脳に休息時間を与えることで、無意識の心がきわめて複雑な課題をも処理できるようになる、
初心者にとっては極度の集中は一日一時間ほどが限度のように見えるが、熟達者は四時間まで延ばすことができる
シャットダウンの儀式は、最初、極端に思えるかもしれないが、実は十分な理由がある。それが「ツァイガルニック効果」だ。
ネットを使うときを前もって予定に入れ、それ以外では使わない。コンピュータのそばにメモ用紙を置いておくといい。それに〝次に〟ネットを使う時間を書いておき、それまでは絶対に使わない。
生産的な瞑想の目的は、あなたが精神的にではなく、身体的に何かに従事している時間──ウォーキング、ジョギング、車の運転、シャワーを浴びる──を利用して、一つの明確な仕事上の問題に注意を集中させることだ。
提案1.注意散漫と堂々巡りに注意する
提案2.深く考えるための三段階のシステム
まず、問題解決のための関連する〝未確定要素〟を注意深く精査し、それからその価値をあなたのワーキングメモリーに保存する。
未確定要素が特定できたら、その要素を用いて答えるべき〝次段階の問い〟を明らかにする。
あなたが出した答えを精査して、得たものを〝確定する〟
つまり、記憶力の訓練の副次効果として、注意を集中する能力全般の向上があるということだ。
この章で提案する戦略は、第三の選択肢を提案して、この常道から私たちを抜け出させようとするものだ。つまり、こうしたツールはもともと悪いものではなく、あなたの成功と幸福に欠かせないものもあるかもしれない。しかし〝同時に〟サイトに時間と注意を費やす基準をもっと厳しくすべきで、したがって大半の人はこうしたツールの使用をもっと控えるべきだということを認めることだ。要するに、中道があり、ディープ・ワークの習慣を身につけたければ、がんばってそうすべきである。
目標に照らして、十分なプラスの影響のあるツールのみを使う この戦略の第一段階は、仕事と私生活の両方で主要な高い目標を定めることだ。
80対20の法則:多くの場合、結果の八〇パーセントは、考えられる原因のわずか二〇パーセントから生まれている。
ソーシャル・メディアは制限なく使用すると、ディープ・ワークを著しく妨げる
仕事外の時間はよく考えて使う〝べきであり〟、使うことが〝できる〟
重要なのは、夜間や週末をどうするか前もって考えておくことだ。
娯楽サイトによる時間と注意力への影響をなくしたいなら、それに代わる良質なものを頭脳に与えること
物事をすっきりさせるため、最小のブロックを三〇分とする。
第一に、あなたは〝ほぼ確実に〟ほとんどのことに必要な時間を低く見積もっていることを認めねばならない。
第二の対処法は、〝オーバーフローの条件つきの〟ブロックを使うことだ。ある業務に必要な時間に確信がなかったら、予測時間を囲みにせず、その後に別の目的のための追加のブロックをつくる。時間が必要になったら、この追加のブロックを充てる。
第三の対処法は、仕事のブロックの使途に寛大になることだ。多くのことを一日に割り振るが、それぞれを必要な時間より長くするといい。知的労働者の一日には多くのことが発生する。そんな突発事に取り組むための時間ブロックをつくっておけば、物事が円滑に進む。
たえず立ち止まって、「残りの時間に何をすれば私にとって意味があるか?」と自問する習慣
一日の予定を立てる利点は、シャロー・ワークにどれくらいの時間を費やすか決めることができることだ。
シャロー・ワーク:あまり知的思考を必要としない、補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。
第一に、固定スケジュールのおかげで作業の選択が一律ではなくなっている
第二に、時間に制限があるため、自分が属する組織の習慣についてより注意深く考えざるをえなくなり、それはより多くの価値を生み出すことにもつながる
「このメッセージが指しているプロジェクトは何か、そしてこのプロジェクトを成功させるには、どのように進めるのが最も効果的か?」 これに答えが出たら速やかに、プロジェクトの進め方を説明し、現段階を指摘し、次の段階を強調するメールを送ろう。私はこれを〝プロセス中心の方法〟と呼ぶが、受け取るメールの数と、メールによる心の乱れを最小限にしてくれる。 例に挙げたメールに対するプロセス中心の返信を考えてみよう