経済発展への貢献、社会保障負担との関連など、様々な側面から考察をくわえているが、全編を通じて、「移民はその国の経済発展に貢献する」という結果に至っている。
トランプ政権もそうだが、日本の移民政策も、もう少し進まないだろうか。
財・サービスの国際移動の自由化にとって例外があった。それは労働移動
移民はアメリカ人労働者の賃金を引き下げる方向に働くが、その影響は小さい
移民がアメリカ人の雇用に及ぼす効果はごく小さなものである。
生産要素の自由移動によって比較優位の原理がより活かされるようになり、これらの生産要素が流入する国の経済、したがってそれらの国で生まれた住民にも便益をもたらすことになる。
労働者が他国に移住すると、移民先の国で競争関係にある労働者の賃金は下がるが、移民の出身国で競争関係にあった労働者の賃金は上昇する──ただし、その代償は労働により高い賃金を支払わなければならなくなる資本所有者が担うことになる。
他の途上国よりも多くの看護師を海外に送り出しているフィリピンにおいて、一人当たりの看護師数が依然としてイギリスを上回っていることを説明している(Clemens 2009)。国外への移住の期待は人的資本への投資を促進する一方で、その多くが移住を果たせず国内に留まっているためである。
高度人材の国外移住は、母国での人的資本への粗投資を減少させるのではなく、むしろ増大させているのだ。
Clemens and McKenzie(2014)が指摘するように、一般的に送金は移民送出国の経済成長にはあまり貢献しない。しかし送金は本国に残された住民の厚生にとってかなり重要なものとなっている。移住者が稼いだお金の多くは送金され、そうした援助で生活を維持している家族や友人たちの貧困問題の緩和に役立っている。
ある仮説によると、経済発展と環境破壊の関係は逆U字型──「環境クズネッツ曲線」として知られている関係──をしている(Shafik 1994)。
第一に、もし富を増加させることが目標であるならば、比較優位の原理に逆らうことは難しい。世界の富を最大化しようとする移民政策において、原理が意味するところは明快である。
移民の増加によって損害を被るアメリカ人労働者の損失は簡単に認識できて、彼らがすぐに不平を訴えるのに対して、移民の増加がないときに他のアメリカ人労働者グループが被る損失は容易には察知できず、人々の話題にも上らない
メディケア・パートAへの支払いは14・7%だが、総支出に占める割合は7・9%にすぎなかった
基準ラインの比較で財政赤字が大幅に拡大する唯一の方策が「強制排除策」であった。
出生率が過去30年間で劇的に低下したため、メキシコの人口統計上の過渡期はすでに終了したと考えられる。それどころかサブ・サハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)を除いて、人口統計上の過渡期は事実上、全世界で終了している。アフリカからやってくるアメリカへの移民はこの10年で増加傾向にあるが、アフリカ移民の大部分は北アメリカよりもヨーロッパ大陸を目指している。理由は簡単で、アフリカからの旅費が少なくて済むからである。
帰化率や英語力など同化に関する基本的指標を見る限りでは、一世紀前の移民に比べて現在の移民の方が適応が速い
過去の移民の波は移民送出国の人口統計の過渡期が終了すると同時に後退していったが、それと同様にメキシコからの移民も今後は一貫して下降線をたどるという研究結果も発表
「低技能の移民の流入によって、アメリカ人の高技能の女性が家庭生活を犠牲にすることなしに自分のキャリアを追求することができるようになった」。その結果、アメリカ人の技能の高い女性の出産率を高めることにもなった。
人口比で見ると、二つの全く異なるケースがある。移民の比率が高いルクセンブルク(3・7%)と総人口に対して移民が非常に少ない日本(ほぼ0%)
前節で議論した、職種に関する人材不足リストは次の二つの点で役立つ。第一に、それによって雇用主が労働市場テストを迂回できることである。第二に、通常なら高技能労働者しか受け入れない国へも、低技能労働者が移民できるようになったこと
外国人労働力の募集は、労働力の不足を解消する一方で、物価の上昇を防ぎ、かつ現地の労働者にも悪影響を与えることがないという斬新なメカニズムであると見なされている(Massey and Liang 1989, pp.201‐202)。
アメリカ進歩センター(the Center for American Progress)のロバート・リンチとパトリック・オークフォードは、もし不法移民に合法的な身分が与えられたなら彼らの賃金は15・1%程度上昇するだろうと主張している(Lynch and Oakford 2013)。
移民制限政策は、労働者を非生産的な場所に閉じ込め、生産拡大の妨げとなる。対照的に、国境が開放されれば、地球上のすべての人が自分の労働生産性が最も高くなる場所に移動できる。
先進国では、ベビーシッターやクリーニング、運転手など、それほど技能を必要としないサービス部門が大きく伸び、その後はより労働集約的な農業や建設業へ成長の重心が移行していくだろう。