医療ジャーナリストの筆者が書いた、医療費の無駄に関する本だ。
この本にも書いてあるとおりだが、病院(医師も含めて)は診療報酬から収入を得ている以上、医療費を削減するインセンティブはない。
勤務医は病院に雇われたサラリーマンなので、なかには義憤にかられて医療費削減を頑張ることもできるが、病院の本音としては迷惑だろう。
私は、①患者の医学的な利益、②患者の満足度、③病院の経営の順に優先順位を考えて診療を行っている。
病院の経営にそこまで忠実でなくて済むのは、開業医ではなくて勤務医だからだろう。
だから、患者の利便性を考えて、定期薬の長期処方をすることもあるが、幸い病院から叱られたことはない。
無駄な医療についての考え方は、やや古い。EBMの考え方が根付く前に医師としてトレーニングを受けたからだろう。血圧の基準や糖尿病の基準がコロコロ変わるからといって、決して良い加減なわけではない。むしろ、世界の趨勢が変化しているのに、ガイドラインが硬直化するほうが問題だ。抗がん剤だって、いまは無理して高齢者に投与する時代ではない。
とはいえ、指摘内容については概ね同意。
大量の薬剤(polypharmacy)については、BMJのpodcastで「将来の循環器疾患が少し減るよりは、大量の内服薬を減らしたほうがいいんじゃない?」という議論が行われるなど、海外でも話題である。
そして在宅医療。どう考えても資源の無駄遣いだ。1日に100人以上診療できる医師に、1日数人しか診察させないのは、もったいないと思わないのだろうか。(介護施設への訪問診療は効率的ではあるが、実質入院だ。)診療報酬を高くすれば、群がる開業医はいる。「需要はある」と主張する医師もいる。しかし、それはすべて保険でカバーされて1割負担だからだ。実際にかかる費用を10割で請求されたら、「医師ではなく看護師だけ、さらにはケアワーカーの訪問だけで結構です」と言われるだろう。値段が安かったらなんでもして欲しいのは当然だ。入院で医療費がかかるからと在宅におしつけるのは家族の負担が大きすぎる。その間を埋めるサービスが必要だろう。
日本薬剤師会が発表している「残薬調査」(2007年)では、在宅の75歳以上の後期高齢者は、年間で475億円分ものクスリを無駄にしているとみられることが明らか
本文中で詳しく述べますが、財務省の資料で「終末期医療費」(死亡者の死の直前1ヵ月にかかった医療費)を見ると、なんと1人あたりの平均額(実費)は約112万円になっています。身も蓋もない言い方になるかもしれませんが、いまの日本人は最期の1ヵ月で112万円をかけて死んでいく
厚労省の「患者調査」(平成26年)によると、年齢とともに受療率(なんらかの医療を受けている率)は上がっていき、60~64歳では、人口10万人に対して7000人以上が入院または外来診察を受けています。
特定疾患療養管理料としての「特掲診療料」が加算されます。これは、結核、がん、糖尿病、高脂血症、高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈、喘息、胃潰瘍、慢性肝炎などの病気の外来管理について適用される加算で、225点=2250
高血圧患者1人の外来再診を計算すると、「再診料720円」+「外来管理加算520円」+「特定疾患療養管理料としての特掲診療料2250円」=3490
差額ベッド代は、入院時に大部屋を希望していることをきちんと意思表示すればかかりません
患者の申請によって払い戻される仕組みになっています。2年以内であれば事後申
「限度額適用認定証」は、あなたが入っている保険の保険者(保険証の発行元)に対し交付申請を行えば、発行してもらえます。国民健康保険なら、市(区)役所、町(村)役場、勤め先から発行された保険証なら会社の担当者に申請します
高額療養費制度が適用されるのは、「1ヵ月の間」の医療費についてです。この1ヵ月とは、「毎月1日からその月の月末まで」を指します
で、家族が同じ保険に入っている場合は合算できることになっています。これを「世帯合算」と言い、1件が2万1000円以上なら合算でき、それが限度額を超えれば高額療養費制度が適用されます
世帯合算の高額療養費の適用が直近の12ヵ月に3回以上あった場合には、4回目からは負担額が軽減されるという措置です。もちろん、1人でもこの措置は適用されます。つまり、4回目の医療費からは、限度額が下がります
医者の評判で信用していいのは、近所の信頼できる人の口コミか、医療関係者の間での評判だけです。その医者がどこの医学部の出身、以前にどこの病院で勤務していたかなどをチェックし、それをもとに関係者の話を聞き出せれば、それに越したことはありません
。とくに「念のため」と言って、患者に検査を勧める医者は、疑ってかかるべきです
紹介状を書いてもらったら、必ずそこの病院で行った検査結果もいっしょにもらいましょう。そうしないと、また一からやり直しで、医療費がかさむ一方になります
日本人間ドック学会が調査したデータによると、2012年に人間ドックを受診した全国の約316万人のうち、全項目で「異常がなかった人」の割合はたったの7・2%です。つまり、92・8%の人がなんらかの「異常がある」ということになってしまったのです
「いまの日本は4人に1人の高齢者が全体の6割弱の医療費を使っているのが現状で
生命保険文化センターの全国実態調査(平成24年度)によると、要介護状態となった場合、次の【図表19】にあるように、月々かかる費用の平均は7・7万円です。ただし、介護には初期費用がかかり、実際に介護を経験した人が一時費用(自宅の増改築や介護用品の購入など)にかけた金額の平均は91万円です。