【本】16126『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』池上彰, 佐藤優

投稿者: | 2016-12-09

いつもの黄金コンビによる著作だ。

『新自由主義が、そうした「すべてが経済合理性で計られるタブーなき社会」を助長している面』がある。
さらに、新自由主義に伴って出てきたのが、自己本位のナルシシズムだ。価値観不在の環境から生じ『権力を持ったエリートが、社会全体に対する責任を思う前に、自己利益や自己実現ばかりを優先している』。

右派、左派というかつての分類も、現在では意味がなくなった。両者ともに、保護主義に走っている。

本著で述べられている各国のリーダーは以下だ。
トランプ、橋下徹
『「サルコジ現象」の典型的症例です。「思考の一貫性の欠如」「知的凡庸さ」「攻撃性」「金銭の魅惑への屈服」「愛情関係の不安定」というサルコジの特徴のすべて』があてはまる、と厳しい。

プーチン
『法や慣習、そして国際社会の世論を始めから無視する』これは、帝王学を修めていないからだと佐藤氏は指摘する。『倉庫番からいきなり社長にしてしまうと、プーチンのようになってしまう。』
組織に所属して揉まれる大切さを強調している。

エルドリアン大統領
クーデター後には粛清の嵐で、ますます独裁制を強めている。

このようなリーダーが現れているのは、『宗教があるか、あるいは「敵」のイメージがあるところです。アトム化していない、耐エントロピー構造があるところだけに、リーダーが出てきている。』という観測だ。

筆者は教育の重要性を説く。
『近代国家においては、すべての土台をなすのが教育です。ですから、教育の中に、リーダー論、リーダーシップ、愛国心を埋め込む必要があります。』

『どうすればリーダーが育つのかは、よくわからない。しかし、少なくとも教養、リベラルアーツを備えていなければ、リーダーとして育たない。そこだけははっきりしている』

『エリート教育に必要なのも、実は、個々の知識や教養以上に、人間は「群れをつくる動物」であり、「独りでは生きていけない存在である」ということを教え、学ぶことではないかと思います。』

『〇歳から二二歳までの教育を無償化すると、少なく見積もって二兆円。給食費や私立大学の学費など数千億円を入れても六兆円もあれば十分でしょう。ということは、消費増税の一%~三%で賄える額』である。確かに、こうみると実現可能な範囲の政策である。

その他
『どんな政治体制も、単なる暴力だけで七〇年も維持されるものではありません。』
この言葉は印象的だ。確かに、国民の支持を失うような国は70年ももたないだろう。

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