地政学リスクという言葉を目にすることが多い。
テロや領土問題など、多くの出来事で使われる。
しかし、地政学の考え方について、全く知識がないために少し本を読み漁ることにした。
「マッキンダーの地政学」が有名だが、初心者にはやや敷居が高い。
本書は、「地政学は戦争の歴史を学ぶこと」と謳っているとおり、戦争の歴史にやや偏重しているきらいがあるが、地図が多いために世界史を復習するにはわかりやすい。
中世では、領土を広げるための戦争が行われたが、近代以降は、海洋国家が覇権を握るようになってきた。
ロシアが黒海方面とアジア方面に交互に進出を試みていること、中国が内陸国家から海洋国家へとシフトしつつあることがよくわかる。
勉強になったのは、戦争に関する学説だ。
ピンカーが、戦死者を当時の世界人口に対する比率で調整して比較したところ、上位8位までが19世紀以前の戦争で占められた。このデータを元に、人類は20世紀以降は平和になった、というのである。
これには、民主主義国家同士は戦争をしないという法則―”マイケル・ドイル教授が現代に復活させ、今や国際政治論や国際関係論では「もっとも法則らしい法則」”も関係している。民主主義国家では、個人が国家に優先されるために、必然的に戦争に対する動きが鈍くなるというものらしい。
ブルース・ラセット、ジョン・オニールという学者が調べたデータによると、”きちんとした同盟関係を結ぶことで40パーセント、相対的な軍事力が一定割合増すことで36パーセント、民主主義の程度が一定割合増すことで33パーセント、経済的依存関係が一定割合増加することで43パーセント、国際的組織加入が一定割合増加することで24パーセント”戦争する確率が減るらしい。
逆に言うと、民主主義国家ではない中国、北朝鮮を隣国に抱える日本は、まだまだ気が抜けないということだろう。