【本】16016 仮想通貨革命 by 野口 悠紀雄

投稿者: | 2016-03-08

仮想通貨に関して詳細に書いた本です。
批判する風潮が強いですが、安易な風潮は本質を見誤ります。
筆者も指摘していますが、仮想通貨に関する批判の多くは、既存の通貨にも当てはまるものです。

私が考える、仮想通貨による最も大きな影響は、「自立・分散・協調型のネットワークによる相互監視が信頼性を担保する」という、ブロックチェーンに代表される技術です。
この種の技術が普及すれば、人々の価値観にも影響を与えるのではないでしょうか。例えば、日本では根強いお上頼みの価値観が崩れる可能性があります。

医療で言うならば、学会のガイドラインに頼るのでなく、peer to peerで蓄積された症例(エビデンス)を元に、臨床上の決定を行っていくというものです。
ブロックチェーンに寄せて考えるのであれば、ある症例を誰かがアップロードしたときに、その治療戦略や診断が妥当かどうかをネットワーク上の他の医師が相互監視しているというイメージでしょうか。そうして蓄積された症例は、データマイニングによって膨大なエビデンスとなります。
本来、専門家が集まっている業界であれば、お上頼みになる必要はありません。このような価値観がもっと広まっていいのではないでしょうか。

本文より
“「リープフロッグ」(蛙跳び)と言われる。従来の発展形態をそのままなぞるのではなく、技術進歩があると、それまでの段階を飛び越えて、新しい段階に行ってしまう”
途上国で、固定電話を持たずにスマホを持っているような状況をさして使うようです。
仮想通貨によって、個人が海外のサービスを受けるハードルが高くなる可能性もあります。マイクロファイナンスも盛んになる可能性も。
しかし、国側からみると、仮想通貨は自国資本を流出させる可能性につながるため、禁止に動く国も多いようです。

“日本でもイノベーションの重要性は強調される。しかし、それは、官僚機構を通じてのイノベーションだ。ベンチャーキャピタルでさえ官製や半官製だ。それは、マーケットの判断が反映されないという意味で、集中的な仕組みのうちでも最悪の形態だ。”
筆者の意見には大いに賛成です。イノベーションは技術の進歩と潜在的な需要が高まっているところで自然と発生するものだと思います。
補助金によって生み出されたイノベーションが持続性を持つとは思えません。

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