【著者】
朝日新聞の中国総局特派員です。
【内容】
ジャーナリストが書いた本だけあって、取材にかける熱意、粘りがすごいです。
まずは「裸官」の実態について詳細に書いてあります。裸官とは、子供の留学や愛人の海外移住を利用して、汚職で貯めた金をシャドーバンキングを通じて国外へ持ち出し、最後は自分が裸一貫で海外逃亡するというものです。これを海外視点から描いたものを初めて読みました。
この取材のために、アメリカにある中国人の別荘街へ潜入しています。ここには、妊娠6ヶ月で米国へわたって米国で出産することで、2人目の子供を米国人にすることで自分たちの出世の妨げを防ぐ官僚夫婦や、年齢に不相応な高級外車、買い物をしながらも近所付き合いはせず一人で生活する、おそらく政府関係者の愛人などが生活しています。
また、習近平の娘がハーバード大学へ留学していたのを突き止め、卒業式にも潜入しています。同級生に何度もアタックし、情報を聞き出すのは並大抵のことではありません。
習近平の話についても詳細です。
父親が副首相となりながら一夜にして罪人として迫害され、自身は地味な地方官僚からスタートしています。荀子を愛読しており、現在の「法治国家を目指す」という考えが根ざしているのはここかもしれません。
習近平が現在独裁的な力を持ったのは、江沢民と胡錦濤の権力争いの結果、両者が共倒れになったから、という分析はなるほどと思います。
汚職追求についても、追求されている政府関係者も、文革と関係ない平民の出ばかりで、「太子党」(「紅二代」)は追求を免れています。これも、習近平のバックに彼らがついているから。
様々な情報を体当たりで仕入れている様子は脱帽です。情報入手への姿勢もふくめて勉強になりました。