【本】16099『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』 by 内藤正典

投稿者: | 2016-10-10

イスラム文化について説明した書籍は数あれど、この本ほどわかりやすく簡潔にまとまった本はないだろう。
筆者がイスラム文化を尊敬していることもよく伝わってくる。

世界中、様々な文化があるが、本質的なところは共通なのだと思うことはよくある。
表現の仕方が違えど、喜怒哀楽は皆それぞれあるし、コミュニティ内での弱い者を助ける、という文化も世界共通だ。

しかし、価値観は大きく異なることがあるので、決して押し付けてはいけない。
筆者が指摘するとおり、『ヨーロッパ的価値観を啓蒙するというやり方では対立は深まる一方』でしかない。
中東の問題も、発端は西側諸国の過剰な介入から起きたものであり、アラブ諸国自体に罪はない。

筆者は、過剰な同化主義に異を唱え、『イスラム世界と西欧世界とが、水と油であることを前提』にしながらも『暴力によって人の命をこれ以上奪うことを互いにやめる』ようにしなければ、両者の溝は埋まらないだろうと言う。

イスラム教徒の問題を考えるのは、移民の孤立問題と根深い。
オランダのように過剰なリベラル主義の国でも、結局イスラム原理主義に立ち返ることになったし、フランスのような普遍主義は明らかに対立を生んでいる。
アイデンティティを保ちつつ、社会的に自立できるようにしなければ、移民の孤立問題はなくならないだろう。

価値観を超えて理解し合う能力が必要だ。

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