Audibleにて。
東大准教授である松尾豊先生と塩野誠さんとの対談本。
人工知能に関わる書籍のなかで、松尾先生の考察は、社会のあり方などに及び、哲学的、政治的な面からも示唆に富む。
人工知能をとらえるうえで、行動主義vs認知主義という対立がある。
すなわち、人工知能は人間そっくりの反応をするから知能がある(行動主義)という立場と、実際に理解していなければ意味がない(認知主義)という立場だ。私は、前者でいいのではないかと思うが。人間だって、本当に理解していることなど一握りだろう。
サイバー国家の登場
松尾先生の想像では、今後サイバー国家と呼ばれる国が出てくるかもしれないとのこと。
その国では、国土という概念にあまり意味がなく、その国の「国民」の情報を守るということを役割とする。
しかし、データの価値が高まることで、このようなサイバー国家が税金や国民を集める可能性がある。
さらに、各分野をつなぐ役割をもつ、betweenessと呼ばれる能力が重視されるとのこと。
これはAI以外にも言われていますが、現在は専門分野同士の橋渡しができる人材の価値が高いと言われています。
さらに、これまでの法制度では捉えられない出来事が起きる。
・軽犯罪を見逃される権利(カメラで自動検知された信号無視を見逃される権利はあるか?)
・データから明らかになる政治家やスポーツ選手の行動(利益誘導?八百長?)
上記のような、これまででは見逃されてきたものも、データによって可視化されたときに、社会的に許容されるのかどうか。
選挙などは本来、ある程度の利益誘導を期待して集票するものですが、これがはっきりと明示されてしまうと、許容されないかもしれない。
データ分析、相関の発見などをAIが行うのであれば、人間の役割は、意思決定をすることと、謝罪をすることになるのではないか。
これまでの人工知能書籍にはない、人工知能発達に伴う社会変化などの考察が深く、面白い本でした。
反面、人工知能自体の内容は少ないです。