立川談志は、落語はあらゆる人間の業の肯定だ、と説く。
落語が描いているのは、人間、特に江戸下町住民の営みである。
登場人物は名前を聞けばキャラがわかる。
与太郎といえば何をやってもうまくいかないボケの役どころ、赤井御門守といえば家柄はいいが世間知らずなお殿様、医者はいつだって藪井竹庵というヤブ医者だ。
いずれのキャラに優劣はなく、彼らの織りなすドラマを描いたものが落語だ。
必ずしも勧善懲悪になるわけではないし、救いようのない最後を迎えることもある。でもそれでいいじゃない、というのが業の肯定ということだろうか。
落ちの難しさについて書いてあるのも面白い。聴衆の前提知識がないと、どこが面白いのかもわからなくなってしまう。
そこをわかるように、しかしクドくならないように説明しながら笑いもとるというのが腕の見せどころだ。
いわゆるベタな笑いであり、大爆笑を誘うというわけではないが、やはり面白い落語は何度聞いても面白い。
落語を聞くと、昔から今まで人間のやることはそう変わっていないな、と感じる。
古今東西普遍的な人間臭さが落語の魅力ではないだろうか。
驚きは、これを書いたのが立川談志29歳の頃だということ。
「30にして立つ」ということだろうか。
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