【まとめ】
所要時間は180分。
人口学がどのように発展してきたかについて知ることができます。
【筆者紹介】 速水融
宗門改帳を元に人口を調査する方法を開拓した方のようです。
【感想】
ヨーロッパに比べて、日本や中国などの東アジア諸国では、戸籍の歴史は紀元前にまで遡ることができるようです。ですが、人口動態を把握できるほど綿密な戸籍ができたのは、江戸時代の「宗門改帳」が出来てからのようです。
日本ではキリスト教除外のために発展した宗門改帳ですが、イタリアではカトリック教徒の教会への登録のため、スウェーデンでは、ルター派のプロテスタント教国のため、教区民が聖書を読めるかどうかの調査をする(プロテスタント教徒は教区員全員が聖書を読めなければならない)ため、同時代に精密な戸籍が作成されています。これらは毎年作成されるため、国民のほとんどが自分の年齢を正確に知ることとなります。
面白いことに、この本を読むと歴史の流れと人口動態がリンクして見えてきます。
例えば、源平の戦いで、東国の源氏が西国の平氏に勝つことができたのは、西国で飢饉があったからではないか、という説があります。私は、出口治明さんが『人生を面白くする 本物の教養 』で述べていることで知りました。
さらに、江戸時代の人口動態も興味深いです。江戸時代には、東日本の人口は減少、江戸は停滞、西日本は増加しています。東北は度重なる飢饉、江戸は東北、関東の人口を吸収しながら(江戸住民の1/4~1/3は農村出身)も死亡率が高い(都市墓場説)ために人口が停滞していた、というのが理由です。薩長の勢力増大には、こんな理由もあるかもしれません。
人口動態の面から歴史を考察するのも面白いかもしれない、と思わせる本でした。