非常に面白い本でした。
将来は、エネルギー、情報、運送のコストがゼロに近づく。
その状態では、ソーシャルコモンズという協働型の利益追求の価値観が優勢になっていくだろうという内容です。
インフラをつくった初期投資の回収をどうするか、現在は営利企業の手に委ねられているコモンズの運営がどのようにオープン化されていくか、などまだ課題はありますが、考え方は肌に合うものでした。
分散・協調・水平型というネットワークはセキュリティや安定性で一極集中のネットワークに勝ります。
医療界も分散型のネットワークの方が時代の変化に対応するうえでリスクが低いと思うのですが、昨今では一極集中の流れが加速しているように感じます。
さて、このような傾向は医療現場についても影響が大きいでしょう。
現在、指数関数的にセンサーの個数が増加しています。
本著によれば、IoTにつながるセンサーは2007年では1000万個、2013年には35億個へと増加しており、2030年には100兆個に上ると予想されています。
当然、身につけたセンサーを通じて集まる健康情報の量も増加します。
聴診音や顔色、声などもセンサーを通じて定量的に分析されるようになると、診断学は人の手を離れます。
医療における限界費用ゼロという状態は難しいですが、不可能ではありません。
風邪を引いてクリニックへ行く。
主訴を入力すれば、普段から身に着けているセンサーや、クリニックにある医療センサーから集められた情報によって緊急性があるかどうか判定され、緊急性なしと判定されると対症療法のための処方箋が出てくる。
これで、風邪診療に関しては限界費用がゼロとなり、ゲートキーパーとしてはどれだけ患者がいても処理可能です。
当然、現在の保険診療で想定される枠組みではないですが、利用者(患者)にとって便利で安価なサービスが出てくるのではないでしょうか。