村上春樹にとって小説を書くというのがどういうことなのか。『職業としての小説家』よりずっとわかりやすくなっていると思う。久しぶりに知らない世界を見せてくれた本、感動しました。すばらしい。
ものを書くっていうのは、とにかくこっちにものごとを呼び寄せることだから。イタコかなんかと同じで、集中していると、いろんなものがこっちの身体にぴたぴたくっついてくるんです。磁石が鉄片を集めるみたいに。その磁力=集中力をどれだけ持続できるかというのが勝負になります。
この文章はあっていいのか、ないほうがいいのか、ここまで書いて、この先は書かないほうがいい、とか、そういう見切りをつけなくちゃいけないわけです。そういういくつかの決断をすること自体が、自分を知ることになる──僕はそのように感じています。
僕にとってはそれは、どこまでもマジにリアリスティックなものなんです。おとぎ話なんかじゃぜんぜんない。