2冊目は中国関係。
【著者】
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。
中国関連で著書が多数あり、もともとは食料受給率などについて書いてある本が多いですが、最近は中国の経済事情について書いてある本も。JBpressなどでも記事を書いています。
【内容】
中国関連の統計情報を元に中国の状況を記載しています。
中国の統計情報は不明確な部分も多いのですが、「当局が持っている情報だってその程度」だそうです。中国政府の方針を決める情報の根拠もその程度だと筆者は認識しています。
広い中国で正確な統計は困難なのでしょう。
統計情報の話も有用ですが、エピソードの話も面白いです。
例えば農村部の話。
農村部でも携帯の普及率は世帯割合で200%近くあります。めいめいが政府の実態を訴え口コミが広がる事態に、胡錦濤政権は思想統制を図りテレビ購入の補助金を出したそうです。冷蔵庫の補助金は出さないのに。
地方農民が低い人件費で製造業を支えたことが中国の原動力となっています。
経済成長によって人件費が上がり成長が鈍化することを恐れ、中国政府もサービス業など産業の転換を図っています。
しかし、筆者の指摘によると、地方にはまだまだ貧しい農民がたくさんいます。しばらくは彼らが都市部へ流入して製造業を支えるだろうと予測しています。
農村部との格差是正には、移動の自由、最低賃金の上昇、富裕層への課税強化などの対策が必要ですが、いまや富裕層の意見を代表する共産党(この表現が好きです)にどこまでできるのか。
中国の官僚制についても歴史が深い。
日本は封建制のため、地方に独立国が多数出現しました。そのため藩主と住民との関係は濃厚で特別になっていきます。
一方、忠僕は郡県制のため、中央から派遣された官僚が地方を支配します。住民との関係が濃厚になることを防ぐため3年程度の任期で別の地域や中央などへ異動します。習近平も、地方での実績を積み上げて上り詰めています。
3年間の間に好き放題して金を貯めこむのが地方官僚の定石だといいます。
いまの中国について、データも充実しているので読みやすい本でした。