人口予測は、様々な未来予測のなかで、最も正確なものの一つとされています。
戦争などが起きない限り死亡率が数年で大きく変化することはありません。
さらに、出生率の予測も経年変化が大きく変わることはないからです。
人口変動の三要素とは、出生・死亡・移動と呼ばれており、人口の増減に最も寄与するのは死亡です。
死亡は男女・全年齢にまたがり、しかも人口減少をもたらす直接の原因になるとのことです。
「少子高齢化」が問題となっています。
私は、「少子化」と、「平均余命の延長」がもたらした問題だと考えていました。
しかし、筆者は、『出生率の低下が人口高齢化を引き起こす主因であることが明らかである』と述べます。
確かに、平均余命が多少延長したところで、65歳以上の人口はそんなに大きく変わりませんが、長年の少子化により、未成年人口は激減しています。
そう思って最近のニュースを見ると、「高齢化問題」は、「少子化問題」と「高齢者の問題」を混同していると言えます。
少子化問題、それは相対的に高齢者の割合が大きくなっているという問題です。
これにより、介護難民の増加、年金の破綻などの問題が起きています。
本来の意味での高齢化社会の問題で、これらは出生率が上がれば根本的には解決します。
対して、「高齢者の問題」は、単に高齢者が増えたという問題です。出生率が上がっても解決しない問題です。
例えば、交通事故や特殊詐欺の被害者に高齢者が増えてきたという問題や、安楽死・尊厳死などの問題です。後者は、社会保障費の観点から議論されることもありますが、本来は高齢者の自己決定権の話のはずです。
このような問題は、出生率が上がっても解決しません。
両者を混同して議論することは意味がありません。
さて、少子化…。本当に危機感を感じない限り、出生率向上のための具体的な施策は行われないのでしょうか。
もう十分危ないところまで来ていると思いますが…。
脱線しましたが、この本は、難しいところもありますがとても読み応えがあります。
少子化が、実は社会の構造的な問題で、社会の性質によって起きるということも述べています。
ヨーロッパ各国の比較は大変興味深いものです。
人口予測、高齢化社会などに興味がある方はぜひ一読の価値があります。