今月のAnnals of Internal Medicine (2026年2月号)
Original Research
Effectiveness and Safety of Statins in Type 2 Diabetes According to Baseline Cardiovascular Risk
- Known: 2型糖尿病患者におけるスタチンの心血管保護効果は確立されているが、10年リスクが10%未満の「低リスク」群での有用性は十分には検証されていなかった。
- New:
英国のプライマリケアデータを用いた標的試行エミュレーションにより、低リスク群を含むすべての層でスタチン開始が全死亡および主要心血管イベントの減少と関連することが示された。 - Future: リスク層に関わらず一貫したベネフィットが認められたことから、低リスクの糖尿病患者においても積極的なスタチン導入が推奨される可能性がある。
Ann Intern Med. 2026;179(2):157–167
Once-Weekly Oral Islatravir Plus Lenacapavir Versus Daily Oral Bictegravir, Emtricitabine, and Tenofovir
Alafenamide in Persons With HIV-1
- Known: HIV治療では長期間の服薬継続が必須であり、アドヒアランス向上のため、より投与間隔の長い選択肢が求められていた。
- New: 第2相試験において、週1回経口投与のIslatravir +
Lenacapavirは、1日1回投与の標準療法(B/F/TAF)と比較し、48週時点で高いウイルス抑制率を維持し、安全性も良好であった。 - Future: 週1回という利便性の高い選択肢は、患者のアドヒアランス向上とQOL改善に大きく寄与する。今後大規模な検証が進められる。
Ann Intern Med. 2026;179(2):168–176
Integrating Methadone Services Into Primary Care in Ukraine: Two-Year Outcomes From a Randomized Trial
- Known: オピオイド使用障害(OUD)患者へのメタドン維持療法は、専門クリニックへの通院負担がアクセスの障壁となっていた。
- New: ウクライナでのRCTにおいて、プライマリケアへのメタドン処方の統合は、専門クリニックと比較して治療継続率を維持しつつ、包括的な診療の質を有意に改善した。
- Future: プライマリケアへの統合はOUD管理のアクセシビリティを高め、特にリソースの限られた地域での標準的な治療モデルとなる可能性がある。
Ann Intern Med. 2026;179(2):177–186
Diagnostic Follow-up of Positive Results on Low-Dose Computed Tomography Screening in the Medicare
Population
- Known: 低線量CT肺がん検診の有効性は精密検査の質に依存するが、実臨床でのフォローアップ状況は十分に知られていなかった。
- New: Medicare受給者の調査で、陽性判定後のガイドライン遵守率は約60%であり、約3分の1で不十分なフォローアップしか行われていない実態が浮き彫りとなった。
- Future: 検診制度そのものだけでなく、陽性判定後の適切な診断プロセスへと患者を繋ぐ体制の強化が、死亡率低下を最大化するために不可欠である。
Ann Intern Med. 2026;179(2):187–195
Eligibility and Prognostic Performance of Smoking Duration–Based Versus Pack-Year–Based U.S. National Lung
Cancer Screening Criteria
- Known: 現行のパックイヤーに基づく肺がん検診基準では、マイノリティ層の適格率が低くなり、医療格差の一因となっていることが指摘されていた。
- New: 喫煙期間(30年以上)に基づく代替基準は、現行基準に比べて人種間の格差を解消し、全人種においてより高い感度で肺がん症例を検出できることが示された。
- Future: 喫煙量だけでなく「喫煙期間」を考慮した基準の導入は、検診の公平性を高め、より多くのハイリスク者を救う可能性がある。
Ann Intern Med. 2026;179(2):196–206
The Incubation Periods of Mpox Virus Clade Ib
- Known: 新たな系統であるMpoxクレードIbの流行が拡大しているが、その潜伏期間の正確な分布は不明であった。
- New:
コンゴ民主共和国でのデータに基づき、クレードIbの潜伏期間中央値は13.6日と推定された。これは既存の系統(クレードIIb)より長い傾向にあり、性的接触の有無で差異が認められた。 - Future: 現行の21日間監視期間が妥当かどうか、再検証が必要となる可能性がある。病原性の違いと併せて監視体制の最適化が求められる。
Ann Intern Med. 2026;179(2):207–215
Reviews
Risk for Cancer With Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists and Dual Agonists
- Known: GLP-1受容体作動薬の副作用として、特定のがん(甲状腺がんや膵がん等)のリスク増大が懸念されてきた。
- New: 48のRCT(9万人以上)のメタ解析において、GLP-1受容体作動薬は甲状腺がん、膵がんなどの主要な肥満関連がんのリスクを有意に増加させないことが示された。
- Future: 現時点での安全性は支持されたが、がんの発生は長期的な事象であるため、10年以上の追跡調査による最終的な結論が待たれる。
Ann Intern Med. 2026;179(2):216–229
Cannabis-Based Products for Chronic Pain
- Known: 慢性疼痛に対する大麻製剤の使用が増えているが、製品ごとの有効性と安全性の比較は十分ではなかった。
- New: システマティックレビューにより、THC/CBD比が高い製品は神経障害性疼痛をわずかに改善するが、めまいや悪心などの副作用リスクを数倍に高めることがわかった。
- Future: 鎮痛効果は限定的であり、副作用頻度を考慮すると一貫した推奨は難しく、症例に応じた慎重な判断が不可欠である。
Ann Intern Med. 2026;179(2):230–241
Effect of Interventions Aimed at Reducing or Modifying Saturated Fat Intake on Cholesterol, Mortality, and
Major Cardiovascular Events
- Known: 飽和脂肪酸の制限は心血管病予防の基本だが、リスク層別のベネフィットの差は明確に整理されていなかった。
- New: RCTの解析により、高リスク群では飽和脂肪酸の置換がイベントを減少させるが、低リスク群では5年程度の期間で明確な意義は認められないことが示された。
- Future: 一律の「飽和脂肪酸回避」ではなく、個人のリスクプロファイルに応じた、より個別化された食事指導アプローチへの転換が必要である。
Ann Intern Med. 2026;179(2):242–255
Efficacy and Safety of Bisphosphonates for Complex Regional Pain Syndrome
- Known: 難治性の痛みであるCRPSに対してビスホスホネート製剤が試用されてきたが、その確実な有効性については議論があった。
- New: メタ解析の結果、短期間(4〜12週)ではわずかな除痛効果が得られる可能性があるが、副作用リスクが中等度上昇し、長期的な効果は不明であることが示された。
- Future: 一律の使用ではなく、特定の病態(早期の活発な炎症期など)をターゲットとした精密な症例選択が、ベネフィットを最大化する鍵となる。
Ann Intern Med. 2026;179(2):256–269
Beyond the Guidelines
How Would You Manage This Patient With Idiopathic Acute Pancreatitis?
- Known: 原因不明の「特発性」急性膵炎は、再発予防のための胆嚢摘出や精査の適応に苦慮することが多い。
- New: グランドラウンドでの議論により、最新ガイドラインに基づく遺伝子検査の役割や、微小結石を想定した経験的治療としての胆嚢摘出の判断基準が体系化された。
- Future: 特発性であっても、若年発症や重症度に基づく層別化により、侵襲を最小限に抑えつつ再発を防ぐ個別化管理の重要性が確認された。
Ann Intern Med. 2026;179(2):276–284
Position Papers
The Legal and Ethical Framework for Artificial Intelligence in Gastrointestinal Endoscopy
- Known: 内視鏡分野へのAI導入が加速しているが、法的責任やデータのバイアス、患者プライバシーなどのガバナンスが課題となっていた。
- New: 世界内視鏡学会の国際コンセンサスにおいて、アルゴリズムの透明性、医師の最終責任、学習データの多様性確保を柱とする10の指針が合意された。
- Future: AIを補完ツールとして活用する上での倫理的・法的基盤が整備され、今後各国の医療現場への実装に向けた指針となることが期待される。
Ann Intern Med. 2026;179(2):270–275
History of Medicine
A History of American Legal Barriers to Gender-Affirming Care
- Known: ジェンダー肯定ケア(GAC)への法的なアクセス制限は、米国の政治的・社会的な重要課題として浮上している。
- New:
歴史的分析により、現在の制限は突発的なものではなく、1世紀近くにわたり患者、臨床医、民間支払者に対して適用されてきた規制の長年の進化と変遷の結果であることが示された。 - Future: 過去に法的障壁を乗り越えてきたコミュニティの知恵と歴史を理解することは、現在の激しい政策論争を適切に評価し、医療の公平性を保つ上で不可欠である。
Ann Intern Med. 2026;179(2):285–291
Special Articles
Talking With Patients About Health-Related Mis- and Disinformation
- Known: 社会的・政治的要因による医療デマや誤情報の拡散は、公衆衛生に対する深刻な脅威となっている。
- New: 誤情報に翻弄された患者と対話する際、医師は否定から入るのではなく、患者の価値観を認めつつ科学的根拠を提示する高度なコミュニケーション・スキルが提案された。
- Future: 誤情報への対応は現代の医師の重要な臨床能力のひとつであり、診察室での標準的なプロセスとして組み込むべき時期に来ている。
Ann Intern Med. 2026;179(2):292–293

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