【本】16130『天災から日本史を読みなおす』磯田 道史

投稿者: | 2016-12-13

災害記録を通じて、日本史を振り返った一冊。

伏見地震などは、司馬遼太郎の小説にも頻出である。謹慎処分を受けた加藤清正が、地震直後に救助隊を率いて秀吉救助のために馳せ参じて許された話や、秀次事件に連座して娘を殺された最上義光が家康の下にのみ参じた話などは有名である。
他にも、武田信玄の娘・菊姫が倒れそうな家屋の梁を支えて女中を逃したという、本当かどうか分からない話まである。

実際、災害が歴史に与えた影響は無視できるものではない。被災後には得てして家臣の団結力が高まり、復興へ向けて必死で努力する。さらに、代替わりが起きて若手の起用が進むこともあり、名君が誕生しやすい。シーボルト台風のあとに佐賀藩再建を担った鍋島閑叟などは好例だろう。

また、戦国時代が起きた理由も、慢性的な飢饉があったために、隣国へ攻め入る必要があったことを原因とする説もある。

歴史を勉強するには、様々な側面からの考察が重要だと改めて感じた一冊である。

“「しかたなく、背負った女子を波中に投げ捨て、波をしのぎ、かろうじて、母のもとにいたる」。””江戸時代、孝はそれほど重かった。”

“赤穂浪士もそうだが、おおむね一七〇〇年頃までの近世武士は行動的で決断が速かった。しかし平和が続き、世襲が重なると、近世武士は次第に行動が格式張ってきて「機能的」でなくなる傾向がみられた。幕末頃になると、むしろ民間の活力がすばらしく、浜口梧陵のような民間の篤志家が防潮堤建設などという公益事業でも活躍する姿がみうけられる”

“一八二八年のシーボルト台風の被害から立ち直るために、佐賀藩に西洋文明を重視する改革派勢力が登場。”

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