【本】16076 逃げる百姓、追う大名 江戸の農民獲得合戦 by 宮崎克則

投稿者: | 2016-07-10

どんな領主も人口が欲しい。

しかし、農民にとって領主は必ずしもいい存在ではない。
そこで、「走り人」という形で他の土地に逃げ出す者もいた。本著はそのような「走り人」の実態について書いた本である。

戦国時代の終わりとともに、各国も建前上は仲良くせざるを得なくなった。そのため走り人は元の国へ帰すという前提があった。しかし、細川家と黒田家のように仲が悪い大名家では、そのような取り決めを交わしていないものもあった。(両家の中が悪くなったきっかけも、要は転封に伴う税金問題である。結局、どの時代でも経済問題が外交にクリティカルである。)
本音では、どの国も自国の人口を増やしたいため、移動してきた住民を保護する政策をつくる国もあった。「去る者は追い、来るものは拒まず」が本音であろう。

特に、第一次産業がメインであった時代では、一人あたりの生産性が変わらないため、人口と生産量は比例する。そのため、なおさら自国の人口は増やしたい。
“大名が農民を土地あるいは領内に縛りつけようとする傾向は、中後期よりも前期の方が強かった” これも、農業生産性と関連している。技術により生産性が増加し、人口が増加するとともに、移民の受け入れ需要も減少する。

江戸時代は移民は歓迎されたが、現代ではいかに。
実態について詳細に記載してあり、面白い本だ。

※人口に関する情報
“一六〇〇年頃の全国人口は、一〇〇〇万~一四〇〇万人ほどと推計されており、幕府による調査が開始された享保六年(一七二一)は二六〇五万人、調査結果の伝わる最後の年の弘化三年(一八四六)は二六九〇万人”

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